25年までにヘルスケア新事業部門の
30%を占める存在になり得る

帝人
ヘルスケア新事業部門
機能性食品素材事業推進班 班長
北薗 英一

 食品メーカー各社が注目するバーリーマックス。これを仕掛けたのが総合素材メーカーである帝人と聞けば、意外だと思う人が大半かも知れない。しかし、“新規素材の開発”という点からみれば必然であったと、ヘルスケア新事業部門機能性食品素材事業推進班班長の北薗英一氏は言う。

 「当社事業の2本柱であるマテリアルとヘルスケアのうち、ヘルスケアの分野では今後、“未病”や“予防”という観点が不可欠になるのが、高齢化による医療問題を抱える日本の現実です。それ故に、機能性食品としての食物繊維を新規素材とする方向性は自然なものでした」

 数多くの新規素材を検討する中で、着目したのが「腸内フローラ」だった。研究数が多く、新たな発見が続いている上、将来性も見込めた。腸内フローラを整える“食物繊維”を探し始め、そして出会ったのが、オーストラリア連邦科学産業研究機構が開発したバーリーマックスだった。一般の大麦と比較して、2倍以上の総食物繊維と、第3の食物繊維と言われるレジスタントスターチ(難消化性でん粉)を4倍以上含む。大腸がんの多いオーストラリアで、10年もの歳月をかけて品種改良されたものだった。

 「新規素材でありながら昔から食べられてきた食材。つまり、承認などのハードルも低く、スピード感を持ってビジネス展開ができる点も魅力であると感じました」

 しかし、バーリーマックスに対する帝人社内の反応は必ずしも良好ではなかったという。何しろ、同社が初めて取り扱う食品素材であり、しかもそれは食物繊維。“ビジネスになりっこない”という冷ややかな目もあった。

 「私自身、当初は麦の輸入の手続き方法すら分からない状態でしたから、社内の反応も当然と言えます(笑)。しかし、食物繊維には当社が培ってきた高分子解析技術、機能性評価技術が活用できること、そして日本人の健康意識への高まりなどを背景に、必ずビジネスになるという確信もありました」

 16年、冒頭で触れたようにテレビの情報番組でバーリーマックスが取り上げられたこときっかけに自社製品のグラノーラに注文が殺到。以降はさまざまな食品メーカーで商品化が進み、着実に販路を拡大している。

 「社内の評価も変わりましたが、まだまだ拡大できる領域であり、新たなラインアップの拡充も模索中です。25年までにはヘルスケア新事業部門の目標売上高1500億円のうちの、20~30%は占める存在となりたいと思っています」と北薗氏は抱負を語った。

問い合わせ先
帝人株式会社
https://www.teijin.co.jp/focus/barleymax/