厚さわずか185mm
薄さへのこだわりは現状への疑問から

ダイキン工業
舩田聡
常務執行役員
空調営業本部 本部長

 risoraの幅は、日本の住宅空間にマッチする半間幅の798㎜で、高さは295㎜。そして厚さはわずか185㎜しかない。ちょうど大人の手の中指から手首くらいまでの長さで、フラッグシップ機「うるさら7」の半分しかない。

 なぜ薄さだったのか。実は、国内に出荷される室内機は年々、厚みを増し、“おデブ”になり続けている。省エネ法の「トップランナー制度」があるからだ。1988年に省エネ法の改正で導入された。民生部門のエネルギー消費の増加を抑えるために、エネルギーを多く使用する機器ごとに、省エネ性能の向上を促すための目標基準(「トップランナー基準」)を満たすことをメーカーや輸入事業者に求めている。

 エアコンも、この10数年で目標値がどんどん上がってきた。省エネ性能を上げるには、熱交換器(室内機の内部でびっしりと並んでいる薄い板)を大きくして面積を広げるのが基本だ。しかし、日本の住宅に取り付けるためには、横幅は半間(約90cm)以内にするという制約がある。そのためここ10数年で日本のエアコンは、どんどん前にせり出してしまったのだ。

 その結果、デザイン性も失われていった。インテリアとしての室内機は、空間でその存在感を否応なく高め、住まう人が理想とする空間づくりを損なう存在にすらなったのだ。

失われたデザイン性を回復し、
体験価値を提供する

risoraのデザイン画。運転してパネルが開いても美しく見えるように熟考された

「7種類の色は単なるカラーバリエーションではなく、インテリアやライフスタイルのトレンドを読み解く中で見出した7つの質感を基にしています。お客さまがどのような空間を実現したいかという視点から用意しました。言葉を換えれば、お客さまがいかに暮らすのかという体験価値をデザインしたものとも言えます」(舩田本部長) 

 また「risora」は、空間に溶け込むデザインへのこだわりから、ラインホワイト、ブラックウッド、フォレストグリーンなど、7種類のバリエーションをもつ。しかも、通常の塗装ではなく、インモールド成形技術を採用して、深みのある質感を再現している。

 つまり、「risora」の薄型と多色パネルへの展開は、単なる中級機へのシフトではない。「エアコンのあり方を再考し、新たな技術革新に挑むもの」(舩田本部長)なのだ。