高齢社会が世界のどこよりも早く進展する日本。今、地方創生の一翼を担う日本版CCRC(生涯活躍のまち)構想が注目されている。それは超高齢社会を、チャンスに変える地方創生のエンジンとなり得るのか? 地方創生のため産学連携に取り組む大学の動きと併せて、その可能性を探った。

地方創生のエンジンとなり得るのか?
「日本版CCRC」の可能性

 CCRC(Continuing Care Retirement Community)とは、米国で普及している健康時から介護時まで継続的ケアを提供するコミュニティーのこと。今、政府の地方創生の主要政策として、その日本版CCRCが「生涯活躍のまち」構想という名で注目されている。

 「生涯活躍のまち」とは、地方創生の観点から、中高年齢者が希望に応じて地方や“まちなか”に移り住み、地域の住民(多世代)と交流しながら、健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができる地域づくりを目指すものだ。すでに全国で約230の地方自治体が、日本版CCRCの推進意向を示している。

少子高齢化社会のピンチをチャンスに変える
“逆転の発想”がある

三菱総合研究所
プラチナ社会センター
松田智生 主席研究員
チーフプロデューサー

 なぜ日本版CCRCは、地方創生のエンジンとなり得るのか。CCRCの研究者で、日本版CCRC構想有識者会議の委員も務める三菱総合研究所主席研究員の松田智生氏は、その理由を「日本版CCRCには、少子高齢化社会のピンチをチャンスに変える“逆転の発想”があるからです」と語る。

 米国のCCRCは、実際に超高齢社会をチャンスに変える地方創生のエンジンとして機能しているという。CCRCのコミュニティーは現在、全米で約2000カ所、居住者約70万人、約3兆円という市場規模を誇っている。その特徴は、介護移転リスクを払拭するため、一つの敷地内で継続的ケアが行われること。また、なるべく“介護させない”ために、予防医療や健康支援、社会参加などが緻密にプログラム化されていることだ。

 「介護保険のない米国では、介護度が上がると事業者のコスト増になるため、介護にさせない健康寿命延伸の取り組みが積極的に行われています。そこが介護保険に依存した日本のシニア住宅と異なる“逆転の発想”になっている部分です」と松田氏は説明する。

出所:三菱総合研究所