実際、図表2を見ると、大企業では特にセキュリティ問題への過度な警戒感が、スマートフォン活用を阻害する大きな要素となっているのがわかる。しかし、いまやあらゆるビジネスが世界を相手に戦っている。「他国の状況と比べても、日本のセキュリティへの懸念は突出している」と片山氏は指摘する。

 過剰に意識し過ぎた結果、諸外国のライバルに機動力で後れを取ってしまうようでは本末転倒。「セキュリティと高度な活用のバランス感覚が大切」(片山氏)だ。

 利便性のみならず、セキュリティ面もしっかり保障したMDMの導入などでモバイル活用の基盤をつくり、SFAなどのツールを効果的に用いれば、確実にビジネスの効率は上がる。そう語る片山氏の期待の一端が、「活用領域の広がり」だ。

 これまでスマートデバイス活用はハイテク産業や金融業界、製造業など、「従来からIT活用が進んできた産業」で顕著だったが、モバイルならではの特性は、むしろ流通業界や医療界で大きな貢献をもたらすはずだという。

「たとえば病院に入院する患者さんの健康状態は、刻一刻と変化します。そうした現場にモバイルコンピューティングが活用され、浸透すれば、より質の高い医療が実現するでしょう」

 こうした「モバイルだからこそ」の活用場面は無数にある、と片山氏。スマートデバイスの活用はもはや「するかしないか」の段階ではなく「どう効果的に行うか」という段階に来ているようだ。それがグローバルな趨勢。その巧拙がビジネスの成果へとつながるのである。