欧州債務危機による金融市場の先行き不透明感や世界的な景気後退感は高まる一方だ。国内においても、遅々として進まない震災復興や円高、社会保障など、問題山積で、不安ばかりが先に立つ。このような状況で、何も手を打たないで嘆いていては、資産は目減りするしかない。手元にある資産は、積極的に運用していく必要がある。そこで、これからの積極的資産運用について、ファイナンシャル・プランナーの横山利香氏に聞いた。決して難しいことではなさそうである。

 

 郵便局の定額貯金に10年間預けたままにしておけばお金が2倍になって戻ってきたというのは、早20余年も昔のバブルの頃の話。ゼロ同然の金利が常識化し、日本経済(日本株)も長く低空飛行を続けて、資産運用を取り巻く環境は相変わらず最悪だ。

「今はマメに運用しないとお金を殖やせません。努力した人だけが報われる時代になってきているのです」

 こう指摘するのは、ファイナンシャル・プランナーの横山利香氏だ。実は、彼女自身も株式や外貨、不動産などに幅広く投資し、積極的に資産を運用している。

流れが変われば
投資先を乗り換える

 誰もがその必要性は痛感していても、大きな成果を期待できる投資対象は、同時に相応のリスクを抱えていることも事実。最初の一歩を踏み出すには、かなりの勇気が必要だ。そこで、横山氏はこう背中を押す。

横山利香
検定テクニカル・アナリスト。ファイナンシャル・プランナー。株式投資や外貨投資、投資信託、不動産投資などを実践する個人投資家。投資や資産運用をテーマに、マネー誌から一般誌まで幅広く活躍。著書に『「株」で着実に資産を10倍にふやした私の方法』(ダイヤモンド社)など多数。

「初心者なら、まずは少額からチャレンジしてみるといいでしょう。仮に1000万円程度の運用資金があるなら、その10分の1前後を目安にして、これぞと思ういくつかの金融商品に分散投資してみるのです」

 お金を投じた後も、「そのまま放置」では意味がない。経済が右肩上がりの時代ならまだしも、バイ&ホールド(長期保有)の戦略はなかなか通用しなくなってきている。

「中長期的に保有し続けておけばもうかるという発想は、すでに時代遅れ。多くの相場は3ヵ月(四半期)、半年、1年といったサイクルで流れが変わる傾向にあります。その折々で有望な投資先に乗り換えていくという柔軟性が必要でしょう。

 3年、5年といったスパンで上昇トレンドが続くケースもありますが、その中にも一時的な下げ局面は多々見られるものです。そのようなときはいったん売って利益を確定させ、あらためて安くなったところで買い直すほうが効率的です」

 こう言われると、初心者にはハードルが高く感じられるかもしれない。だが、さほど難しく考える必要はない。もともと対象を一つに絞り込まず、複数に分散投資することを前提としているし、その中で見込み通りだったものだけを継続運用し、期待はずれだったものは潔く見切りをつければいいのだ。もちろん、若干の損失は出てしまうが、まだ傷が浅いうちに損切り(処分売り)すれば、期待に応えてくれた投資対象がもたらす利益で十二分にカバーできるはずだ。

「一般的に株式などでは含み損(評価損)が10%程度に達したら損切りするのが望ましいといわれていますが、それでは遅いと思います。5%をメドに、さっさと気持ちを切り替えていくのが無難でしょう」

 最初から複数の投資対象に目星を付けて、その後の経過も注意深く観察し、アテが外れたものは速やかに処分して、もうかっているものも一時的な下げ局面がやって来たら即座に利益を確定させる──。このスタンスを徹底すれば、まず大損を被る事態は少ないだろう。