組織/人材とルール、
プロセス、ITによる四位一体の改革

 SAPはファイナンス業務のデジタル化にいち早く取り組んできた。新しいITを導入すればデジタル化できるかというと、それほど単純ではない。SAPジャパンの中野浩志氏は「組織/人材とルール、プロセス、ITをいわば四位一体で改革してきました」と語る。

 例えば、以前は各地域・国ごとにファイナンス業務を行っていたが、改革によって、ファイナンス業務はグローバル組織に統合され、ローカル組織では、顧客との関係が深い案件サポートなどのみ行うようになった。定型業務は世界3カ所のシェアードサービスセンター(SSC)、専門性の高い業務については、監査や税務といったテーマごとに各地のCoE(Center of Excellence:組織横断的な専門組織)が担っている。

次世代ERPやAIなど新技術を活用し、「デジタルファイナンス」で優位性を築くSAPジャパン
CFOソリューション推進室
シニアソリューションプリンシパル
中野浩志氏

 SSCに代表されるグローバルなファイナンスプラットフォームの整備により、業務効率は大幅に向上。改革前と比べると、取引量そのものは増加したにも関わらず、「購買から支払い」「受注から入金」といったプロセスごとのコストは低下した。こうしたプロセスをエンド・ツー・エンドで管理する仕組みも整えられた。

 この改革によって、現地法人ごとに置かれたCFOの役割も変わった。

「財務会計業務についていえば、以前の各国CFOは完全性と正確性に責任を持ち、加えてビジネスパートナリング業務を行っていました。現在では、SSCが正確性を保証します。CFOは完全性をチェックし、残りの時間を現地法人社長とのコミュニケーションをはじめ、ビジネスパートナリングに割くことができます」と中野氏は言う。

 こうした改革をIT面で支えるのが、次世代ERP「SAP S/4HANA」と、機械学習などを担う「SAP Leonardo」である。

「SAP S/4HANAは明細データを蓄積し、それを高速処理することができます。従来のように財務会計と管理会計の仕組みを別々に持つのではなく、統合することも可能です。これにより、意思決定のスピードを大きく向上させることができるのです」

 同時に、SSCや各国の法人ではデータの均質化に向けた取り組みも進んでいる。これにより、SAP Leonardoによる予測やインサイトの質も向上しつつあるという。