働き方改革は“第2章”に入ったと言われ、「生産性向上」への取り組みが主体となってきた。だが、先へ進む前に、「働き方改革」について、もう一度見直しておくべきことがあるのではないか?
何のための働き方改革?
政府主導で「働き方改革」が叫ばれるようになって久しいが、いまだにピンと来ていない企業、経営者が多いのではないだろうか。
「働き方改革」は2016年の第3次安倍第2次改造内閣発足と同時に謳われるようになって以来、政府主導ということもあり、大手企業を中心に徐々に取り組みが始まった。
長時間労働の是正、同一労働同一賃金、ワークライフバランス……等、様々な議論がされるなか、電通の過労死問題が発覚。働き方改革の議論は一気に「時短」傾いた。
だが、それも「残業禁止」「テレワーク導入」等の“形”が先行し、多くの場合、なぜ今、それが自社にとって必要なのか、という本質的な議論は煮詰まらないままであったのが実態だろう。
カルビーは「お手本」になるか?
他方、働き方改革を学ぶセミナーが活況を呈し、カルビーなどの企業は「働き方改革先進企業」として多く取り上げられている。だが、ここで注意しなければならないのは、カルビーは、“働き方改革のために”改革を行なったわけではないという点だ。
同社は2009年に松本晃氏が会長兼最高経営責任者(CEO)に就任した後、「成果主義」の経営戦略が徹底されたことで、様々な制約を取り除いた働きやすい環境が必要となり、「成果を上げれば仕事が終わったら早く帰っていい」「長時間の残業を良しとしない」等の改革が行なわれるようになった。
そのなかで多くの議論、人事担当者などの工夫の積み重ねがあり、社員の意識の変化が起こって今の姿になっている。
つまり「成果主義」という明確な経営戦略の下、それを実現する最もふさわしい働き方を模索した結果、今の姿につながる「改革」が行なわれてきたのだ。働き方改革ありき、だったわけではない。
政府が「働き方改革」の旗を振り出してから約1年半。いまだ「働き方改革」に対し、なんとなくピンときていない企業や経営者は「一体、何のための働き方改革か」、この点をきちんと見直す必要がある。