フランク ミュラーの代名詞といえば美しい曲線を描くトノウ カーベックス。その立体的なトノウのフォルムは実は“世界初”。2851コレクションはその原点を堪能させる。文=菅原 茂 写真=奥山栄一

トノウ カーベックス 25th
ブランド創設以前にオリジナルシェイプが考案され、創設当初のわずか1年間しか製造されなかった2851ケースを再現する希少品。ギョーシェ彫りにブルーのラッカー仕上げを施した文字盤の美しさも格別だ。18KWG、ケース縦45ミリメートル×横30ミリメートル、手巻き、限定25本。243万円(税込み)

 フランク ミュラーの数ある名作の中で、創業以来一貫して作り続けられてきた代表作がトノウ型腕時計である。最近は、未来を担う斬新で若々しい「ヴァンガード」も人気の的だが、そのデザインの原点にあるのは、あくまでも「トノウ カーベックス」である。ちなみに「トノウ」とは、フランス語で「樽」を意味し、ケースの左右のラインが外に向かって膨らんだ、文字通り樽を思わせる形。その起源は古く、腕時計が誕生した20世紀初頭にまでさかのぼる。また、「カーベックス」は、手首に沿って弓なりに湾曲した形状を指す。

 フランク ミュラーは昨年、ブランド創設から25周年を記念して、「トノウ カーベックス」の原点を語る「2851」コレクションを発表した。着けやすいサイズ感や、控えめとも思える繊細なビザン数字をあしらった文字盤の意匠は、発表と同時に時計愛好家やコレクターの間で大きな話題になった。それもそのはず、ブランドの創業初期の1993年から94年のわずか1年しか作られず、現行コレクションには存在しない2851サイズのオリジナルシェイプを再現する極めて貴重な「トノウ カーベックス」だからだ。

全体が湾曲したケースは、優美な外観と併せて、人間工学的に計算された絶妙な反り具合が、肌に吸い付くような装着感を生む