六つの銀行と連携して
口座での決済が可能に

 PayPalは三つの軸で日本市場での成長を図っている。第1にカバレッジ。つまり、何かを買うという場面でPayPal決済を選べるような環境をつくるということ。この取り組みは近年、大きな前進を見せている。

「私たちは以前から中小規模のマーチャントへの働きかけに注力し、成果を上げてきました。加えて、最近は任天堂やソニーといった日本を代表する企業でのPayPalの採用が増えています。カバレッジ拡大という方向での施策は、今後もさらに強化していきたい」と曽根氏は考えている。

 第2の軸はマーチャント内でのシェア向上。通常、マーチャントはコンシューマーに対して複数の決済手段を提示している。コンシューマーにとってより使いやすく、マーチャントにもメリットのある決済サービスに進化させることで、PayPalはこのシェアをさらに高めようとしている。

“現金主義”が色濃い日本市場において電子決済サービスはどう発展していくのか?図2 個人向け機能のアップデート
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 第3の軸は機能面での改善や拡張である。これについては、2018年6月に重要な発表があった。従来、PayPalのサービスは主としてクレジットカードを使ったオンライン決済で利用されてきたが、その機能を拡張する施策が示されたのである。

「まず、PayPal口座に連携させた銀行口座からの支払いが可能になります。また、これまで買い手である個人からEC事業者などの企業への支払いをサポートしてきましたが、今後は逆の方向、企業から個人への支払いも可能になります(図2)」

“現金主義”が色濃い日本市場において電子決済サービスはどう発展していくのか?2018年6月に行われた記者発表には多くのメディア関係者が集まり、注目度の高さをうかがわせた

 銀行口座との連携は、六つの金融機関との提携により実現した。みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、ゆうちょ銀行である。これらの銀行に口座を持つコンシューマーは、PayPal画面で口座を登録する簡単な手続きを経て、銀行口座での支払いができるようになる。クレジットカードやデビットカードだけでなく、コンシューマーには銀行口座という選択肢も提示される。従来の銀行振り込みとは異なり、コンシューマーの振込手数料負担は発生しない。