データがあるから
積極的な提案ができる
Geppoはもともと、サイバーエージェントの社内用に開発されたツールである。13年ごろに導入され、同グループ内に全面展開されている。
「13年から14年にかけて、サイバーエージェントはエンジニアを大量に採用しました。結果として、社員全体への目配りがやや不足する部分がありました。いくつものビルで分散して働く社員の状態を、人事部門がトータルに把握するのは難しい。こうした課題を解決するために、Geppoが生まれました」
開発に当たっては、人事部門と現場との距離を近づけることが意識されたという。
「ストレスや不満を抱えた社員がいれば、遠慮なく人事に相談してほしい。しかし、『敷居が高い』と感じる社員が多く、どうすれば距離を詰められるかと議論を重ねました。Geppoはそのためのツールでもあります」
Geppoはいわば、「職場の体温計」である。どの部署のコンディションが上昇/下降傾向をたどっているか、誰がどのようなことで問題を抱えているかを、人事部門はほとんどリアルタイムで知ることができる。
「ある社員が数カ月連続で、ネガティブなコメントを書き込んだことがありました。回答を見ると、『雨』が続いていてコンディションもよくない。そこで、その社員には別の部門に異動してもらいました。すると、コンディションは見違えるようによくなりました」と渡邊氏はいう。
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上司との人間関係や職場環境などでストレスを抱えている社員は少なくない。それを敏感に察知して、適切な対処を行う。これこそは、第1部で坂本氏が紹介していた、従業員に「自分たちは大切にされている」と感じてもらえるようにするための重要なポイントだろう。
適材適所のためだけでなく、Geppoはさまざまな施策を検討する上でも有効だ。
「人事部門はGeppoのデータを基に、経営や現場に対して積極的な提案ができるようになりました。データの裏付けがあるから、自信を持って提案することができる。サイバーエージェントの人事部門は、バックオフィスからHRビジネスパートナーへと脱皮することができました。『自分の言ったことが施策に生かされた』と感じる社員が増え、人事は現場に大きく近づいています」