五つの「肝」となる
内製技術

 ソディックが世界トップの放電加工機メーカーへと躍進できた背景には、「五つの肝となる技術を自らの手で進化させてきた点にある。それは放電加工機の、心・脳・骨・筋肉・神経の五つと言い換えても良い」と古川社長は説明する。

「心」とは、「放電電源装置」だ。例えばワイヤ放電加工機では、高速加工では1000アンペアの電流を1マイクロ秒以内で流す電源回路があり、その電流を制御してパルス電流を繰り返し発生させる。ソディックは、放電加工エネルギーの供給方法や加工間隙の距離の最適化などで独自の技術を開発し、それまで“抜き穴加工”が中心だった放電加工機を金型作りに不可欠な道具へと変身させた。

「脳」とは、「NC(数値制御)装置」だ。放電加工機のモータを自在にコントロールすることをもくろんで始まった取り組みは、先にも紹介したように国内初のNC付き加工機の開発へとつながっている。

「骨」とは加工機の重要部品などに「セラミックスを用いた設計と内製をしていること」だ。アーム部分などに長さが1メートルの鉄の素材を使ったとすると、1度の温度変化で10マイクロメートル以上膨張するため、ワイヤ放電加工機で加工すると中心位置がずれてしまう。一方セラミックスの熱変位は半分以下に収まる。ソディックでは、アーム部分にセラミックスを採用している。

「硬く、軽く、熱に強く、消耗しにくく、電気絶縁性も抜群のセラミックスはマシーンの構造精度を決める骨であり、ソディックは自らセラミックスを焼いて利用している。また自社製品以外に外販もしている珍しいケースでもある」(古川社長)

「筋肉」とは、工具や加工物の位置を決める「リニアモータ」のこと。精密機では1ナノメートルレベルで位置決めでき、高速機では毎分100メートルを超える高速、さらに高加速度機では5Gを超える高加速度の位置決めを可能にした。「へたりがなく、10年たっても精度が落ちない」との評価を受けているものだ。

 最後の「神経」とは、NC装置からの指令に基づき、リニアモータの高精度な動作をコントロールする「モーションコントローラ」だ。リニアモータの高応答性や高速性もモーションコントローラとの相乗性が高い。 「一連のものを全て内製することで、『世の中にないものは自分たちで作る』という技術創造の社風と姿勢を堅持している。工作機械としての放電加工機の最大のメリットは、人手不足に対して自動化できる点にあるが、お客様が求められる改善点に合わせて高い設計能力と機械メリットを提供できているのも技術創造の社風が大きいのではないか」(古川社長)

 ソディックの「世の中にないものは自分たちで作る」という経営理念は、技術者たちが自由に発想し、新しいものを生み出す重要な礎となっている。

切削加工の難しいものを電気で削る世界をリードする高精度放電加工機ソディックの工作機械はこんなものを生み出している!
拡大画像表示