睡眠不足は免疫力を下げ
生活習慣病の原因にもなる

​​ 睡眠負債の悪影響は自身の健康にも及ぶ。国立保健医療科学院が事務系労働者の睡眠状態と病欠リスクの関係を調査したところ、睡眠状態が悪化すると病欠リスクが1.89倍に高まることが分かった。「風邪を引きやすくなるし、別の調査では糖尿病、肥満症、高血圧症のような生活習慣病の発症リスクを高めます」(白川代表)。睡眠負債を蓄積させたままでいると将来、認知症になる恐れも。スウェーデン・ウプサラ大学の研究では70歳代以上の認知症の発症危険率が2.14倍、アルツハイマー型認知症が2.94倍に高まることが明らかになった。

仮眠を取るときは、椅子に座り、背もたれの角度を60度に倒し、頭が動かない工夫をして15~20分だけ眠る。仮眠前にお茶やコーヒーのようなカフェイン入り飲料を飲むと、目覚める頃に覚醒効果が表れる
(イラスト出典:白川修一郎著 『ビジネスパーソンのための 快眠読本』を基に作成)

​​ 睡眠負債を蓄積させないためには、単純に7時間以上眠ればいいというわけではない。睡眠環境を整えて、質の良い睡眠をとることが重要だ。例えば就寝直前に大量の食事を取らない、寝酒をしない、就寝30分前に40度の風呂に入って深部体温を少し上げる、寝室の温度を適温に保ち良質な寝具を用いるなどだ。

「寝る前に一日の反省をする習慣もやめたい。ネガティブな事柄しか浮かばないからです」(白川代表)。むしろ翌朝、頭がすっきりしたところで前向きな反省と今日の計画を立てたほうが良い。

​​ 白川代表は、日中眠くなったときに15分から20分程度の仮眠を取ることを勧めている。椅子の背もたれを60度に倒して眠るだけでいい。

 睡眠負債を“返済"するためには、就寝時刻と起床時刻を記録して睡眠を客観視する「睡眠日誌」が効果的だ。24時間を30分単位のマスで区切り、昼寝も含めて眠った時間のマスを塗りつぶし、1日の合計睡眠時間と気分を○△×で記入するという簡単な作業を1週間続けることで睡眠状態、睡眠負債量、睡眠時間と気分の関係が把握できる。

​​「ビジネスパーソンの一日の始まりは、前日の就寝から始まっている」(白川代表)ことを肝に銘じて、良質で適度な睡眠を取っていただきたい。