グローバルな投資目線で長期保有する中国人オーナー
スタートライングループ経営企画部部長。 1978年長崎県生まれ。中央区、港区、江東区を中心に東京湾岸のタワーマンションの売買・賃貸仲介を行うスタートライングループで、マーケティング、経営企画に携わる。宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士を保有。
賃貸物件のオーナーには外国の方もいますが、当社が管理を請け負っている物件で見るとその割合は約20%であり、国籍別では中国人が95%と圧倒的です。
最近、ネット上などで「中国人投資家が、五輪を前に大量に物件を売りに出している」という情報を目にすることがありますが、これは、事実と少し異なります。たしかに、売りたいというオファーはあります。しかし、「売りには出しても、値下げしてまで即売しない」という姿勢で、納得いく価格で売却できるまでは長期戦で臨む、という人がほとんどです。
日本人オーナーが、投資、実需にかかわらず、4〜5年程度で物件を売却していくのに対し、中国人オーナーは10年以上のスパンで、あるいは、20〜30年先の老後を見据えた資産としてタワーマンションを保有するという人も珍しくありません。
というのも、中国人の富裕層は、他国の都市にもいくつか物件を持っていて、グローバルで見ると東京の物件はまだ割安で投資効率が良いと考えているのです。あるいは、日本に来た時に自分で使う別宅として買う人もいます。
そんな中国人富裕層の物件の買い付け方は、実に大胆です。旅行程度の短期滞在で日本にやって来て、たまたま見つけた当社の店舗にふらりと立ち寄り、いきなり「良い物件を紹介して」と交渉を開始。当社の社員とはお互い言葉が通じませんから、ネット上の自動翻訳サービスを使って商談。写真を見て気に入った物件があったら即内覧へ。ラグジュアリー感や高層階、共用施設などへのこだわりは日本人以上です。
そんな“基準”をクリアしたら、何とその日のうちに購入決定(売買契約時は、通訳を付けるなどして、国内の法律に則った手続きを踏みます)。とはいえ、今年から中国政府が海外への資金流出規制を強化したため、こうした大胆な買い付けは難しくなりました。こんな事情も、既存の中国人オーナーが物件を長期保有する理由の1つになっているのかもしれません。