いま、50代男性の約3分の1が100㎠以上の内臓脂肪を抱えているといわれる。内臓脂肪は生活習慣病の元となり、将来の健康を脅かす存在となりかねない。長年、内臓脂肪の研究を行ってきた花王の研究員に、内臓脂肪の「見える化」の重要性を聞いた。
花王 ヘルスケア食品研究所 主席研究員
メタボリックシンドロームという言葉が普及して以降、内臓脂肪という言葉を耳にする機会は増えているはずだ。だが、その正確な知識を持つ人はどれほどいるだろうか。
花王のヘルスケア食品研究所の森建太・主席研究員はこう説明する。
「体脂肪には“内臓脂肪”と“皮下脂肪”の2種類があり、健康リスクに関わるのが“内臓脂肪”の方です。内臓脂肪が多過ぎると、脂質や血圧、血糖などに影響し、心臓病や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病へのリスクが高まります。皮下脂肪はからだの外側にあり、直接つまむことができるのでわかりやすいのですが、内臓脂肪はからだの奥の、内臓と内臓の隙間にあるため、わかりにくいのが難点です」
内臓脂肪の面積が100㎠を超えると、健康リスクが高まる
では、内臓脂肪はどのくらいの量から、健康への脅威となるのか。これは数字でハッキリと表現されている。ちょうどおヘソの高さで胴体を“輪切り”にしたとき、中にある内臓脂肪の断面積が100㎠を超えると、健康リスクが高まるとされる。体積ではなく面積で表されるのは、もともと内臓脂肪がX線CTによる腹部断面の撮影でしか測定できなかったことの名残だ。断面積100㎠はおよそ3kgの内臓脂肪に相当すると言われている。
メタボリックシンドロームの診断基準では、男性なら腹囲85㎝以上、女性なら90㎝以上とされている。
本来はX線CTによる測定が必要な内臓脂肪だが、より多くの人を対象とする健康診断などではメジャーによる腹囲の簡易測定が行われている。統計的に内臓脂肪の面積100㎠は、腹囲85㎝(男性の場合)に対応するため、その数値がメタボリックシンドロームの目安となっているのだ。
花王では、より正確に、そして簡便に内臓脂肪を測定するため、大阪大学と共同で腹部生体インピーダンス(側腹部電圧)法による内臓脂肪計測技術を開発し、内臓脂肪に関する高精度のデータを蓄積してきた。
「そのデータによって明らかになったのは、男性の“隠れ肥満”の多さです。一般に肥満の判定基準となっているのは、体重と身長の関係から肥満度を示すBMI(体格指数)ですが、当社の調査では、男性では肥満ではないとされるBMI25未満の人でも、内臓脂肪面積が100㎠以上ある場合が多いのです。見た目は太っていなくても“薄皮まんじゅう”のように内臓脂肪が詰まっている状態で、BMIが25未満だからといって安心はできないのです」(森建太・主席研究員)
ちなみに内臓脂肪面積が100㎠以上ある男性は、40代で37.2%、50代で42.2%に達する。つまり中高年にとって、内臓脂肪への対策は急務といえるのだ。