慢性的に人手が不足している飲食業界の中で、テクノロジーの活用による労働生産性の改善に挑んでいるロイヤルホールディングス。経営者向け特別セミナー「テクノロジーの進化がもたらす労働生産性革命」(HRソリューションズ主催、5月24日開催)への登壇に先立って、菊地唯夫会長と野々村彰人常務に、取り組みの現状と成果を聞いた。
菊地唯夫 代表取締役会長
厚生労働省「労働経済動向調査」によると、人手不足感は国内のほとんど全産業に広がっているが、その中でも運輸・郵便業、医療・福祉、宿泊・飲食サービス業、建設業などの非製造業や中小企業で人手不足感が強くなっているという。製造業であれば海外に拠点を移したり、ロボットのような機械に置き換えたりすることができるが、非製造業では無理だ。
菊地唯夫会長は、人手不足を解消する施策として、一部の事業で規模の縮小を選択した。
具体的には「営業時間を短縮し、24時間営業をやめたのです」。早朝と深夜の営業をやめると7億円の減収になることを見込んでいたが「それは間違いでした。現場はランチとディナータイムに人員を厚く配置しサービスを向上させたことで、お客さまの満足度が向上し、売り上げが増えたのです」。
この出来事は、製造業では規模の拡大が売り上げの向上に直結するが、外食産業のような人がサービスの価値を直接生み出している非製造業では、規模の拡大はある値を超えたところでサービス低下を招き、逆に売り上げを減少させることを示している。少人数のオペレーション体制は労働生産性を高め利益拡大に貢献するように思えるが、非製造業では必ずしも正解ではなかった。
野々村彰人 常務取締役 イノベーション創造担当 食品事業担当
だが規模の縮小は、企業にとって緊急避難的な措置である。人手不足を補い、高い質を保ったまま規模の拡大を追求するためには、10年当時に比べて格段に進歩したテクノロジーの活用が最善策だ。
では外食産業の場合、どの部分にテクノロジーを導入できるのか。菊地会長は、お客さま満足度を「例えばタイムリーに運ばれてくる、店舗の掃除が行き届いているという『基礎的な満足』と、質の高い接客のような『付加的な満足』に分け、前者に導入の余地がある」と説明する。
「基礎的な満足を高めるためには、テクノロジーに置き換えることで解決できることがあります。例えば掃除は掃除ロボットを使えばいい。従業員が最も神経と時間を使う現金管理は、キャッシュレスの推進により減らすことができます。テクノロジーが人を支援して生まれた時間を使って、従業員はホスピタリティーを発揮し、価値を生み出すことに集中できるのです」(菊地会長)
どのような産業でも労働生産性を高めるためにテクノロジーを積極的に活用すべきだが、菊地会長は、「ヒューマンorテクノロジー」(機械による人の置き換え)が通用する産業と、「ヒューマンwithテクノロジー」(機械による人の支援)が適している産業があるのを認識することが重要だという。