──ECで成功するためのヒントを教えてください。

■店舗とECサイトで相乗効果を図る
オンライン・トゥ・オフライン(OtoO)

進藤 最近の新しい動きの一つに「OtoO」(オンライン・トゥ・オフライン)があります。ネットとリアル店舗のよさを組み合わせてシナジー効果を追求する方法です。楽天が百貨店と協業し、楽天市場に出品する全国の名産品やスイーツを集めた物産展をその百貨店の催事場で行っているのが代表例ですね。

 百貨店は集客効果が期待できますし、楽天は百貨店で買い物をする中高年女性、若いOL、高額所得層に商品やネット通販の魅力をアピールできます。

 ネット通販を始めると、これまで商品を扱ってくれていた小売店に迷惑が掛かると心配する企業もあるようですが、むしろリアル店舗とのシナジー効果によってウインウインの関係を築ける可能性もあるのですから、発想を変えてみるべきかもしれません。

顧客の「経験価値」を高め
“心”に届く情報提供を

──ECサイトを立ち上げてみたものの、集客や売り上げが上がらないというケースも見られます。

進藤 サイトの作り方に、まだ工夫の余地があるのではないでしょうか。たくさんのカフェがある中で、なぜ単価が決して安くないスターバックスが選ばれるのか、遊園地は星の数ほどあるのに、なぜ東京ディズニーリゾートが独り勝ちするのか。消費者に感動や共感をもたらす何かがあるからです。

 そうした感動や共感などの価値を「経験価値」と呼びます。単に商品の価格や情報を並べて見せるだけでなく、おもてなしの心や非日常を感じさせてくれるECサイトのほうが「経験価値」は高まるはずです。

 また、近年マーケティングの世界では「情報デザイン」という領域が注目されていますが、単にサイトのデザインを格好よくするだけではなく、情報が理解しやすく、心に届きやすいように工夫することも大切です。

──アニメや漫画など日本のコンテンツをECで海外に売り込む動きも広がっています

進藤 プロのクリエーターとアマチュアとの境目が曖昧で、より自由な発想が生まれやすいことが日本のコンテンツの強みだと思います。もっとも、すべてのコンテンツが海外で受け入れられるわけではありませんし、国によってはコンテンツの流入規制もありますから、入念な市場調査やプロモーションなどの努力が必要です。

取材・文/渡辺賢一 構成/名須川竜太