「価値創造の主役」は従業員
グローバル化の中にも日本人の良さを

昭和電工は、事業構造改革が功を奏して稼ぐ力を強めている。日本人らしさを生かしたグローバル展開で長期的成長と、さらに高い収益力を確固たるものにしていく。

「価値創造の主役」は従業員グローバル化の中にも日本人の良さを昭和電工 代表取締役社長 森川宏平
もりかわ・こうへい●1957年、東京都生まれ。麻布高校、東京大学工学部卒。82年昭和電工入社。主に研究開発畑を歩み、2013年執行役員。16年常務執行役員、最高技術責任者(CTO)、17年1月から現職

(写真説明:長野県大町市にある大町事業所内の資料館にて。同社は1938年から黒鉛電極の製造を開始し、以来、黒鉛電極をはじめとしたカーボン製品を生産している。黒鉛電極で同社は世界最大の32インチ品の生産技術を確立。同事業は2017年に独SGL GEを買収して世界トップになった)

収益基盤強化で
成長への投資ができる体質に

 大手化学メーカーの昭和電工は、2019年から始まった中期経営計画「The TOP 2021」の策定を機にコーポレートメッセージを「動かす」に刷新。「お客様の声を聴き、技術を磨くことで『こころ』を、『社会』を動かす」企業を目指す。森川宏平社長は、「人の心や社会を動かすと同時に、昭和電工グループの社員自身がもっと積極的に動いていこうとの意味も込めた」と語る。

 その言葉は、昭和電工の業績や財務内容が、新たな成長に挑戦できる状況になったことを意味する。前中期経営計画の期間は、前の3年間と比較し、営業利益は3.7倍、当期純利益は12.5倍、ROEは1.5%から14.5%となり、財務体質の強化、株主還元の充実と収益基盤の強化を実現した。

 「重要なのは、“稼ぐ力”を備え、成長に向けた投資ができる体質になったこと。当社は全てのステークホルダーを満足させることを目指しているが、他のステークホルダーに価値を提供できるのは従業員だけだ。価値創造の主役である従業員が仕事に対して前向きになることが企業発展の基軸だと考える。収益を基に投資して成長を実現し、さらに高いレベルの収益と優位性を確保する。この循環を実現するエネルギーは、『稼ぐ力のもとで仕事を進めている』という従業員の自信である」(森川社長)
昭和電工には、(1)石油化学(2)化学品(3)エレクトロニクス(4)無機(5)アルミニウムの分野にまたがる多彩な13の事業がある。森川社長は「25年には半数以上を個性派事業にしたい」と意気込む。

 「個性派事業」とは昭和電工独自の定義で、「適正な規模(数百億~数千億円)のある市場でトップシェアを獲得する事業」のことだ。現在、個性派事業といえる事業は三つ。ハードディスクは市場規模4000億円でシェアは25%、電子材料用高純度ガスは1500億円規模で25%、黒鉛電極は3000億円規模で30%だ。

 新たな個性派事業を育てるために、3年間で総額4000億円規模の投資を行う。黒鉛電極事業で17年に独SGL GEを買収して世界トップになったように、「市場の主導権を握るため、連結売上高が1兆円規模の企業だからこそできる投資を行い、各事業それぞれの市場の特性に合った姿で優位性を確立する」(同)。

 また、成長過程でグローバル化は必然だが“欧米化”するのではなく日本人の良さを生かした経営を目指す。昭和電工が創業以来受け継いできた不撓不屈の精神も日本人らしいアイデンティティーだ。

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