[特別対談]
『ストーリーとしての競争戦略』著者・楠木教授と
「業界の非常識」を貫くアイル・岩本社長が語る
企業の競争優位とは

楠木 今でも営業エリアや業種は絞っているのですか。

岩本 近年はかなり広がってきましたが、エリアでいえば東京、大阪、名古屋の三大都市圏、業種でいうとファッション、食品、医療、鉄鋼、ねじの5つの業種のお客さまが多いですね。企業規模でいうと、中堅・中小のお客さまが大半です。

楠木 中堅・中小に強いIT企業は他にもありますが、アイルの他社との違いは何ですか。

岩本 社員にはいつも言っているのですが、人は気持ちで動くものです。簡単に言うと、好き嫌いです。これはお客さまとの相性のことを言っているのではなく、お客さまにとって本当にメリットがある商品・サービスを提案して、お役に立てているかということです。

 当社の営業担当は、特定エリアで特定の業種を担当していますから、お客さまと同じくらいかそれ以上に業界知識が豊富です。それに、ITに関しても深い専門知識を持っていますので、お客さまの課題を分析して、その解決に最も適したシステムを提案することができます。営業担当の知識の豊富さにお客さまが驚かれるほどですが、営業担当は単に商品を売り買いする取引関係ではなく、お客さまから相談を受け、解決策を提案する信頼関係を築かなくてはなりません。それができているのが、当社の強みだと思います。

楠木 普通は営業担当と技術担当は分業制になっていますよね。

岩本 当社の営業は1人で何役もこなしています。一方で、アフターサポートについては、営業担当やシステムエンジニアなどが顧客ごとにサポートチームを編成して対応しています。

 営業担当とサポートチームがお客さまと信頼関係を築いているおかげで、リピート率は約98%と非常に高くなっています。

楠木 営業担当に相当の負荷がかかるのではないですか。

岩本 営業担当が負担を感じるのは、お客さまの言うことは何でも聞かなければならないと考えるからです。私は、「お客さまは神様ではない。お客さまとの関係は、フィフティ・フィフティだ」と言っています。

 お客さまが言っていることが間違っていれば、「間違っています」と言っていいし、できないことは「できません」と言えばいい。

 私たちはプロの目で診断して、最適な提案をしている自負がありますから、提案が受け入れられない場合は、無理に受注はしません。それに、接待交際費はゼロです。そのため、「アイルの常識は業界の非常識」とよく言われます(笑)。

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