国内でのプロテインの市場に勢いが出てきている。ここ数年、対前年比で10~20%程度の拡大を続け、2019年は、約480億円規模となる見通しだ。けん引役は明治の「ザバス」である。約40年前からアスリートを中心に活用され、近年ではアスリート以外の"運動・健康関心層"にも広がってきたところに拡大の理由がある。
たんぱく質は、脂質、炭水化物と並ぶ3大栄養素の一つであり、筋肉はもちろん、骨や関節、内臓や血管、皮膚や毛髪など、人体の大部分を構成するもので、生命活動を支える重要な栄養素である。
しかし、一般的な日本人のたんぱく質の摂取量は、1995年をピークに減少傾向で、現在は戦後間もない50年代と同じレベルにある。
プロテインの概念を革新した新製法
この状況に立ち向かっているのが、「たんぱく質」を英訳した名称「プロテイン」製品で国内シェアナンバーワン※の明治だ。
同社は、約40年前から粉末タイプのプロテイン「ザバス」を販売してきた。現在でもそうだが、多くのアスリートは、ハードなトレーニングによって壊された筋肉を修復するため、プロテインを摂取する。ある意味、プロ仕様の商品であり、発売当時は、使用者も限定的で、市場も小さかったが、実はここ数年、国内のプロテイン市場は年々拡大し、現在では、2010年の4倍、約480億円規模となっている。背景には、フィットネスジムの利用者が増えて、一般の人でも体づくりのためにプロテインを求めるようになってきたことの他に、「手軽にプロテインを摂取できるRTD(Ready To Drink)タイプの製品を開発してきたことが大きい」と開発本部発酵開発部の大森敏弘部長は語る。
大森敏弘部長
RTDタイプの製品として、現在、市場をけん引しているのが、同社の「ザバスミルクプロテイン」である。牛乳に含まれるたんぱく質(ミルクプロテイン)には、必須アミノ酸(体内で合成できず、食事などで取る必要があるアミノ酸)の含有量が、豆乳などに含まれるソイプロテインなどよりも多く、かつバランスよく含まれている。
「ザバスミルクプロテイン」は、このミルクプロテインに、ある技術革新を加えた製品である。通常、ミルクプロテインは、胃の中などの酸性下において凝集して吸収が遅くなる。同社は、酸性下でもミルクプロテインを安定させる技術を生み出し、体内に早く吸収されるようにした。これが、速攻吸収製法である。
さらに、この技術は別の効果も生んだ。
「プロテイン製品には特有の風味があり、苦手に感じる方もいらっしゃいます。その風味を抑え、運動後にゴクゴク飲める、爽やかな酸味を感じられる飲料が作れるようになったのです」
それまでにもあった甘味だけでなく、爽やかな酸味を実現できたことで、同社のプロテイン飲料「ザバスミルクプロテイン」は、トップアスリートだけでなく、スポーツをしている誰もが楽しめる飲料としての可能性が広がったのである。近年ではスポーツ関心層の拡大にも後押しされ、コンビニエンスストア商流にも乗るようになり、プロテインは「スポーツを楽しむ人が、どこでも気軽に摂取できるもの」へと変わってきた。現在では、どこのお店にも並ぶ飲料として認知されている。