国際特許の出願は増加中
グローバルな知財戦略の重要性高まる

 知財をめぐる最近の動きとしては、グローバルな知財戦略の重要性の高まりも注目されている。言うまでもなく、その背景には加速する日本企業の海外展開がある。

「中国をはじめとする新興国に、生産や販売の拠点を開設する企業が増えています。その前提となるのが、現地での特許取得などの知財処理。こうした地ならしを怠って現地に入れば、大きなトラブルを招きかねません。特許の国際出願は増えています」(鈴木准教授)

東京理科大学専門職大学院
MIP・鈴木公明准教授
企業の知的財産法務本部を経て、特許庁入庁、制度改正審議室、特許・実用新案審査、意匠審査、意匠制度企画室等を歴任。2005年東京理科大学大学院MIP助教授、2007年准教授、現在に至る。弁理士。著書多数。

 大企業では、欧米先進国における知財マネジメントの仕組みはある程度整っている場合が多い。ただ、新興国での知財管理は経験も人材も不足しているというのが現状だろう。そこで、MIPでは海外を意識した科目を多数揃えている。法律系では国際取引法、戦略系ではヨーロッパビジネス戦略、アジア知財戦略、中国知財戦略、実務系では米国知財法・知財英語、米国特許出願実務などの科目がある。

 グローバルを意識するMIPの姿勢は、中国・清華大学や韓国・弘益大学との学術交流にも垣間見ることができる。教員、院生が知財をテーマに語り合う弘益大との共同シンポジウムは、2010年以降、毎年開催されている。

 また、近年の「クール・ジャパン」「ジャパン・ブランド」への関心の高まりを受けて、MIPはコンテンツに関連する科目を増やしている。この分野ではコンテンツビジネス戦略やコンテンツ契約特論、著作権とライセンシングなど5つの科目が揃っている。

「従来から特許関連の科目は多かったのですが、現在はコンテンツ関係も充実しています。社会人の院生もメーカーの社員だけでなく、コンテンツ業界の人たちが目立つようになりました。例えば、テレビ局やアニメ制作などの分野で実務を担っている社会人。地域ブランドのマネジメントを学ぶために入学した自治体職員もいます」

 このほか、金融機関やコンサルティング会社などで働きながらMIPに通う社会人もいる。例えば、M&Aの際には知財を定量的に評価する必要がある。事業を評価するに際しても、知財実務の重要性は高まっている。