人材の“多能化”で
組織の効率を究極まで高める

 もう一つ、業務基準と同様にマネジャーが把握しておかなければならないのは、業務負荷、つまり仕事の忙しさだ。仕事の忙しさには波がある。経理部門なら1ヵ月のうち、月末から月初が忙しさのピークで、月の半ばは比較的ひまになるという具合だ。波があること自体はお客様の動向でやむを得ない。

   問題は、忙しさのピークに合わせて人材を配置していることだ。その結果、ひまな時期にはやることがなくなってしまい、1時間かければ済む業務を数時間かけてのんびりとやっていたりする。これは人材のムダ使いといえる。

  本当に効率的な組織を作るなら、ボトム(ひまな時期)に合わせて人材を配置するべきだろう。そして忙しい時期になったら、同じ経理部門のなかでも担当の異なる人、あるいは人事部門や総務部門の人に応援に来させればいいのだ。それを実現するのが「多能化」だ。

 多能化とは、各社員が持つ専門分野とは別に、担当の異なる仕事、あるいは別の部門の仕事を処理できるように実務訓練(OJT)を行うこと。社員の多能化を進めることによって、柔軟な人員配置が可能となる。

 全社員の多能化を進めれば、人員配置の効率化を究極まで高めることができ、最小限の人員で最大の効果が望めるようになる。また多能化訓練は、他部門への理解向上、視野拡大、社内人脈の拡大にも役立つ。

  では一体、どうすれば業務の基準を明確にした業務マニュアルを策定したり、多能化訓練を進めたりできるのか。それを可能とするのが業務プロセス可視化法(HIT法)だ。