国民生活センターに寄せられた「手技による医業類似行為」による健康被害の相談件数は、業界の成長に比例して右肩上がりで増えている。この調査は資格の有無を区別していないため、接骨院やあマ指院など有資格の事例も含まれるが、「無資格マッサージへの相談の方が多い」というのが国民生活センターの見立てだ。

 一方、消費者庁は無資格マッサージに限定した同様の調査を行った。その健康被害相談件数は約8年間に1483件。治療期間が1カ月以上の重症例も16%あった。

 そんな健康被害が続出する無資格マッサージを「リラクゼーション業」として所管しているのは、厚生労働省ではなく、実は経済産業省だ。そもそも13年、総務省の日本標準産業分類で「リラクゼーション業」が新設された際、それを推し進めたのが経産省である。

 経産省は無資格マッサージをヘルスケア産業(公的保険を支える保険外サービス産業)と位置付け、その拡大を後押ししてきた。無資格マッサージ最大の業界団体、日本リラクゼーション業協会が主催する施術者コンテストを後援し、審査員の一員も務める肩の入れようだった。ところが、19年のコンテストから一変し、経産省の影も形もなくなってしまった。

業界団体の幹部2人は
無免許マッサージで過去に逮捕されていた

 その理由は、18年11月の内閣委員会において、リラクゼーション業の新設時の経産相だった茂木敏充外相と、同協会の「蜜月関係が追及されたことにある」と別の業界幹部は言う。共産党の塩川鉄也衆議院議員から同党機関紙の報道を基に、茂木氏がかつて同協会の特別顧問だったことや、同協会から献金やパーティー券購入を受けていたことが追及されたのだ。

 片や、「ボディワーク」(ラフィネ)や「りらく」(りらくる)など約2300の会員店舗を抱える同協会の“実態”にも危うさが漂う。同協会の現職理事2人はかつて、無免許マッサージを行ったとして、それぞれ逮捕された経験を持つ。

 このうち一人は、中国人留学生を含めた約520人を無資格にもかかわらずマッサージ師として派遣し、7億円を荒稼ぎしていたとされるご仁だ。当時の報道によれば、警察の押収資料には、「肋骨にひびが入った」「首が動かなくなった」などの苦情が記された帳簿もあったという。加えて17年には、前理事も東京地検から法人税法違反罪などで在宅起訴されている。

 ウェブサイトで「健全な成長を遂げ続けるためには、いま以上に安心かつ安全なサービス環境の実態を築き上げることが必要」とうたう同協会だが、本編集部には「内容を問わず取材は一切お断りしている」とした。

 前出の業界幹部は言う。「同協会が経産省と親密になるまで、われわれは、無資格だが人の体を施術する者として厚労省との関係が深かった。ところがいまは、『経産省の所管でしょ』と相手にされない。たった一つの業界団体によって全体がゆがめられてしまった」。

 経産省にはしごを外され、厚労省にも袖にされる無資格マッサージ。その成長に待ったがかけられる日も遠くないかもしれない。

 最後に、柔整(柔道整復師)とあはき師(あん摩マッサージ指圧師・鍼師・灸師)、そして無資格マッサージを利用するに当たって、最低限気を付けるべき7カ条の鉄則を下図にまとめた。痛みを取るはずが、痛い目に遭わないための参考にしてほしい。

Key Visual by Kaoru Kurata

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