医師11人が教える「腰痛・膝痛・肩痛」治療法#2
Photo by Kuninobu Akutsu、Illustration by Chiharu Nikaido

日本人に特に多い「腰痛」。近年の研究では、痛みを意識し過ぎて活動を制限してしまうと腰痛を慢性化させることが分かってきており「ほとんどの腰痛は動かして治すのが正解」といわれるようになってきた。では、どんなふうに動かすのがいいのか? 特集『医師11人が教える「腰痛・膝痛・肩痛」治療法』(全9回)の#2では、1回3秒、1日2回で痛みを予防する「これだけ体操」を専門医が伝授する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

「週刊ダイヤモンド」2019年11月16日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

痛みを意識して
安静にし過ぎると腰痛が慢性化する

「昔は薬魔、注射魔だったのですが、今はそれをやらなくても腰痛を解消する方法を覚えました」と言う松平浩医師(東京大学医学部附属病院特任教授)。大前提として、腰痛治療には、知っておくべき新常識があると強調する。

「内科的な病気や神経痛が原因ではない非特異的腰痛(明らかな病気のない腰痛)であれば、安静にする必要はありません。痛みへの恐怖から、腰をかばい過ぎるのも基本的にはNGです」

 近年の研究では、安静にし過ぎることで、腰痛が再発、慢性化しやすくなることが判明している。ぎっくり腰のような急性腰痛症でも、安静は2日程度で十分。痛みを意識して活動を制限し過ぎることも、腰痛を慢性化させることにつながる。

「ほとんどの腰痛は、動かして治すのが正解です。非特異的腰痛は不安や恐怖など、心理的な要因とも密接な関係があります。心配し過ぎると、脳が痛みに敏感になります。腰痛に注意を向け過ぎないことが、結果として回復を早めるのです」(松平医師)

 また、レントゲンやMRI(磁気共鳴画像装置)などの画像診断で異常があっても、過度に心配する必要はない。腰痛のない人であっても、70%以上にヘルニアがあるというデータがある。実際に痛みが出るのは、そのうちの一部にすぎないのだ。

「MRIを撮ったら、ヘルニアなんてゴロゴロ見つかるわけです。だから、画像に出ても気にし過ぎてはいけません。ヘルニアがあるから『必ず手術が必要』『負担を掛けないようにサポーターが欠かせない』という常識は時代遅れです。むしろ腰をかばうことで、腰が動かなくなり、血流も悪くなります」(同)

 非特異的腰痛の多くは、椎間板のズレや、その結果としての炎症が引き起こしている。背骨に挟まれた椎間板の中には、髄核というゼリー状の物質があり、通常は椎間板の中央に位置している。ところが、前かがみや猫背の姿勢が続くと、髄核が後ろに移動する。

「これが『腰痛借金』が蓄積した状態です。腰痛借金が積み重なると線維輪が傷つきぎっくり腰になったり、髄核が飛び出て椎間板ヘルニアなどの症状が出たりします。蓄積した腰痛借金を返済し、痛みを改善するためにやってほしいのが『これだけ体操』です」(同)