接骨・鍼灸・マッサージの深い闇#2
Illustration by Mari Mitsumi

かつては開業すれば年収2000万〜3000万円ともいわれた柔道整復師。しかし今や500万円以下も珍しくない。はびこる不正に国や地方自治体、国民健康保険団体連合会も対策に乗り出し、追い打ちをかけそうだ。特集『接骨・鍼灸・マッサージの深い闇』(全6回)の#2は、接骨院の深い闇をえぐる。

「週刊ダイヤモンド」2019年11月16日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

接骨院業界の重鎮が激高して
前代未聞の「退場劇」を演じた訳

「エビデンス、エビデンスって、医者もエビデンスがないことをやっているじゃないか!」

 2016年7月に開かれた、柔道整復における療養費(保険)の適正化を議論する厚生労働省の検討専門委員会。そのさなか、日本臨床整形外科学会から有識者委員(当時)として出席していた相原忠彦医師にそう激しく詰め寄り、座長の遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所長から退場を命じられた傍聴者の姿があった。

 退場を命じられたのは、柔整最大の業界団体、日本柔道整復師会の工藤鉄男会長その人だ。

 日整が柔整業界で占める力はかつてに比べ衰えたとされるが、それでも業界唯一の社団法人組織として絶大な力を誇る。19年3月に開かれた日整の社団法人設立65周年と柔道整復術公認100周年の祝賀会には、安倍晋三首相がビデオメッセージを送り、伊吹文明元衆議院議長など自民党の大物政治家が次々に壇上で祝辞を述べた。

 その「比類なき会長」(日整資料)として19年に4選を果たした工藤氏が委員会で発した冒頭の言葉は、議事録ではなかったことになっている。相原医師は当時を振り返る。

「当然、議事録に載せるべきだと厚労省に求めましたが、『委員の発言ではないので載せられない』と拒否されました。遠藤座長は『こんなことは前代未聞だ』と。その日の帰りのタクシーでは何度も後ろを振り返ったことをよく覚えています」

 工藤会長がそこまで激高した理由はなぜか。「そのとき、柔整療養費の“生命線”の一つがやり玉に挙がったので、工藤氏としても立場上、そうしないと会員に示しがつかなかったのでしょう」と日整以外の業界団体幹部は推測する。