医師11人が教える「腰痛・膝痛・肩痛」治療法#1
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腰痛や肩の痛みには「急性痛」と「慢性痛」の2つがあり、むやみに街角のマッサージ店に駆け込んだり、薬を飲んだりするのはNG。それぞれに適切な治療法があり、なかには重大な疾患が隠れていることもある。まずは自分の「痛み」をきちんと理解し適切な治療を受けることが大切だ。特集『医師11人が教える「腰痛・膝痛・肩痛」治療法』(全9回)の#1では、その見極め方と治療法を詳しく解説する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

「週刊ダイヤモンド」2019年11月16日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

慢性的な痛みは国民病であり
経済的な損失は3兆円以上

 平成28年の国民生活基礎調査によると、健康に関する悩みは男女共に腰痛と肩こりが1位と2位(下図参照)。厚労省の調査(※)では腰痛に悩む日本人は2800万人も存在する。

※膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための研究:大規模住民コホート(LOCOMO スタディ)の追跡

「痛み」による経済的な損失は大きい。松平浩医師(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター特任教授)の計算では、腰痛による労働損失は年間3兆円以上にもなるという。

 労働損失は、病気による欠勤や遅刻、早退などのアブセンティーズムと、業務遂行能力や労働生産性が低下している状態のプレゼンティーズムを足して計算する。

 近年、明らかになったのはプレゼンティーズムの損失が圧倒的に巨額なこと。痛みによるパフォーマンスの低下は、当人はもちろん、社会にも大きな問題なのだ。

 では、どうして腰痛や肩こりに悩む日本人が多いのか? 北原雅樹医師(横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック診療教授)は「日本には慢性痛の専門家が少な過ぎる」と指摘する。

 腰痛や肩こりなどの痛みには、急性痛と慢性痛の2種類がある。腰痛の場合、急性痛の代表例はぎっくり腰で、発症直後は強い痛みを感じても、炎症が治まれば痛みがなくなる。

 問題は、3カ月以上も痛みが消えない慢性痛だ。日常生活のさまざまな場面でマイナスの影響が出てきて、前述のプレゼンティーズムの状態に陥りやすい。

 そこで慢性痛を解消すべく、日本整形外科学会のガイドラインを基本に、北原医師にアドバイスをもらって作成したのが最新版の正しい「痛み治療」の流れを示した次のフローチャートだ。