上手に怒り、
必要のないときは怒らない

 アンガーマネジメントは、1970年代に米国で開発された、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングである。現代では企業や官公庁、教育機関、スポーツ業界でも広く導入され、職場環境の改善、業務や学習のパフォーマンス向上に活用されている。

「私たちが目指しているのは、怒りの連鎖を断ち切ること。怒りの感情は、身近な対象ほど強く、強い立場から弱い立場へ流れ、伝染しやすいという特徴があります。アンガーマネジメントを実践することで、今ここで怒ることなのか、怒らなくてもよいことなのか判断できるようになり、反射的に怒りをぶつけることはなくなります」

パワハラ防止に効果的なアンガーマネジメント研修を提供する日本アンガーマネジメント協会
トレーニングプロフェッショナル
宮本剛志氏

 そう説明するのは、トレーニングプロフェッショナルの宮本剛志氏だ。

 そもそも怒りの感情とは「防衛感情」である、というのがアンガーマネジメントでの考え方である。怒るのは、誰かを攻撃するためではなく、自分を守るため。例えば自分が大切にしている価値観が侵害されていると感じると、それを守ろうとして怒るという手段になる。

「よく勘違いされるのですが、アンガーマネジメントの目的は、怒らないことではありません。守るべきものが自分にとって本当に重要なのかを問い直し、怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らなくて済むようにすること。つまり、自己認識を深めるためのプログラムと言い換えることもできます」(宮本氏)