中小企業の多くが厳しい経営に直面するなか、オーナー経営者の3つの悩みである安定収益源の確保、節税、事業承継を収益不動産活用で一気に解決することを提案するのが大和財託だ。代表取締役CEOの藤原正明氏に聞いた。

――藤原さんの著書『中小企業経営者こそ収益不動産に投資しなさい』(ダイヤモンド社刊)が5月に発行されました。出版の目的についてお聞かせください。

藤原正明(ふじわら まさあき)
1980年生まれ、岩手県出身。 三井不動産レジデンシャルを経て、ベンチャー企業で実務経験を積む。 2013年に大和財託を設立。

藤原 ご存じのように、日本の企業の9割以上は中小企業ですが、その約7割は赤字経営に苦しんでいます。人口減少による国内市場の縮小、ビジネスのグローバル化やデジタル化への対応の遅れなどによって、中小企業が稼げなくなる状況は、今後ますます深刻化するでしょう。

 そうした中で求められているのは、本業が赤字になっても固定費などを賄える安定的な収益源を別に確保しておくことです。

 新型コロナウイルスの影響を受けて、改めてその必要性を痛感した中小企業経営者も少なくないのではないでしょうか。

 今回書いた本では、中小企業のオーナー経営者向けに、安定収益源の確保に加え、節税、事業承継の3つの悩みを一気に解決する方法として、収益不動産活用のメリットを解説しています。

自社株評価を圧縮し
事業承継しやすくする

――3つの悩みを解決する方法は、ほかにもあると思いますが、なぜ収益不動産活用なのでしょうか。

藤原 本業以外に安定収益源を確保するには、新たな事業を始めるという方法もあります。しかし、市場ニーズやビジネスのあり方がどんどん変化していく中で、その事業がキャッシュを稼いでくれる保証はありません。

 その点、収益不動産を取得して賃貸すれば、空室にならない限り安定的に家賃収入が入ってきますし、入居者や物件の管理は専門業者に任せればいいので、特別なノウハウも不要です。

 また、収益不動産を取得すると、建物部分の減価償却費を計上して利益を圧縮し、その分の税金を繰り延べることができます。

 つまり、節税効果も相まって、より多くのキャッシュを確保できるようになるのです。

 以前は、払い込んだ保険料を全額損金処理できる生命保険があって利益の圧縮に利用されていましたが、そうした保険はすでに認められなくなっており、数少ない有効な節税策として収益不動産活用が注目されています。

――事業承継の悩みは、どのように解決されるのでしょうか。

藤原 事業承継における最大の悩みは、自社株評価が高くなり過ぎて、後継者に贈与や譲渡をしようにもできないことです。

 これを解決するため、国は自社株の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制の特例措置を設けていますが、国に経営を管理されてしまうだけでなく、将来M&Aなどの選択がしにくくなるなど、あまり使い勝手のよい制度ではありません。

 しかも、この特例措置で受けられるのはあくまでも納税猶予であって、いつかは税金を納めなければならなくなります。

 一方、賃貸目的で収益不動産を取得すると、資産価値が現金のおよそ半分になり、建物部分の減価償却によって会社の利益も圧縮されるので、自社株評価はかなり下がります。その結果、後継者は納税を先送りすることなく、低くなった税額分だけを納めて自社株を取得できるのです。

 安定収益源の確保、節税、事業承継という3つの悩みを一気に解決できるのは、収益不動産活用以外にありません。