新型コロナウイルス感染拡大の影響でM&Aは一時的に停滞した。だが、他社が手控える今こそ買収のチャンスと捉える企業もある。譲渡を検討している企業にとっては条件交渉における懸念もあるが、自社の強みや買収後のシナジーをしっかり打ち出せば、高く評価される可能性もある。単に企業同士を引き合わせるだけでなく、創業以来、一貫して総合的なM&A支援を行ってきたM&A仲介・アドバイザリーのオンデックに、M&A成功の秘訣を聞いた。
2020年の日本企業のM&A件数は、新型コロナショックの影響を受け、過去最高を記録した昨年から一転して大幅に減ると見込まれている。「昨年比で3割ほど減少すると当社では予想しています。現在はリーマンショックでM&A需要が一気に冷え込んだ08年から09年ごろと似たような状況です」と語るのは、オンデックの久保良介代表取締役社長である。
コロナショックでも衰えないM&Aの意欲
久保良介 代表取締役社長
しかし今回は、リーマンショック後と比べてM&A市場の雰囲気に大きな違いを感じるという。05年に創業した同社は、M&A仲介・アドバイザリーサービスの担い手として、リーマンショック後や、12年からのアベノミクスによる急回復など市場の移り変わりを体験してきた。
その体験を基に久保社長が感じるのは、M&A件数は減っても、買収の意欲そのものは衰えていないということだ。
実際、同社が4月の緊急事態宣言発令後に行ったアンケートでは、企業の買収意欲は発令前と比べて大きな変化はなかった。
「むしろ、他社が手控えるタイミングと考えると、有望な案件の成約チャンスと捉える企業が少なくないようです。リーマンショック後の不況期に積極的にM&Aを実施して成功を収めた企業が多いことも、買収意欲を後押ししているのでしょう。コロナショックによるM&A需要の停滞は、あくまで一時的なものだと思います」(久保社長)
ただし、コロナショックで売り上げが急減し、財務が著しく傷んだ企業が増えている状況を踏まえると、買収先の選定では、より厳密なデューデリジェンスが不可欠となる。
また、大きなショックが発生すると、民事再生や会社更生といった法的整理を伴う再生型M&A案件が急増する。その分、仲介・アドバイザリー業者には、より高度な知見やノウハウが求められるようになるのだ。
「リーマンショック後は、比較的難度が高い再生型M&A案件が急増しました。マッチングだけを行ってきた仲介・アドバイザリー業者では手に負えず、失敗に陥った例も枚挙にいとまがありません。経済情勢が困難な時代ほど、M&A仲介・アドバイザリー業者の手腕が問われるようになります」(久保社長)
久保社長によると、M&A仲介・アドバイザリー業者は、ただ企業同士を引き合わせるだけのマッチング型と、緻密な分析や効果的なストラクチャーの策定などにより、M&A取引の価値の最大化を追求するコンサルティング型の2種類に分かれる。
オンデックは創業以来、コンサルティング型のサービスに徹し、再生型M&Aが急増したリーマンショック後も、あえて難度の高い案件に取り組むことで知見やノウハウを積み重ねてきた。コロナショックによって、買収先のより厳格な評価や、買収後のシナジーを最大化する戦略が求められるようになった今、同社の卓越したコンサルティング力に対する期待は、ますます高まっている。