コロナ禍にもかかわらず、5G(第5世代移動通信システム)/IoT時代のビジネス開発拠点であるKDDI DIGITAL GATEでは、クライアント企業から持ち込まれる相談案件、共創プロジェクトが増え続けている(詳細はこちら)。大きな理由の一つが、体験ツアーからワークショップ、アジャイル開発までのプロセスを全てオンライン化したことだ。オンラインでの具体的な支援プロセスについて、KDDI DIGITAL GATE エキスパートの佐野友則氏とKDDI サービス企画開発本部 アジャイル開発センターの廣田翼氏に聞いた。
リモート環境であることを意識せず、プロジェクトを進められる
KDDI DIGITAL GATEは2018年9月の設立以来、5G/IoT時代を見据えた企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や新規ビジネス創出を支援してきた。今春には、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点に加えて、クライアント企業の所在地を問わない柔軟な対応を可能とするため、全てのプロセスをオンライン化した。
プロセスの第1ステップであるKDDI DIGITAL GATEの体験ツアーをバーチャル空間で行えるようにした他、第2ステップであるデザイン思考をベースとしたワークショップ、第3ステップのアジャイル開発チームによるプロトタイプ開発も全てオンラインで行う体制を整えた。
KDDI DIGITAL GATEで共創プロジェクトを行うクライアントは、圧倒的にリピーターが多く、プロトタイプ開発に至るプロセスをオフラインで一度は体験している。そうしたクライアントからは、オンライン化した後も「オンラインであることを意識せずに、スムーズにプロジェクトを進められた。リモートでも全く問題ない」という声が寄せられているという。
プロセスのオンライン化に当たっては、単にオフラインのプロセスをオンラインに置き換えるだけではなく、オンライン環境の利点を最大限生かすアレンジを加えている。
例えば、クライアントが抱える課題を明確化し、解決策を探るためにワークショップを行う場合、オフラインでは物理的な制約があるため参加人数が限られる。「オンラインなら参加人数の制約がなく、離れた地域にいる人もワークショップに参加できます。クライアント社内のさまざまな部署の人から100通りの意見を聞くことも可能です」。KDDI DIGITAL GATE エキスパートの佐野 友則氏は、オンラインの利点の一つをそのように説明する。
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最近では、ある大手企業のDX推進部門から3つの案件を持ち掛けられた。リモートワーク環境で社員同士のコミュニケーションを深めたり、生産性を向上させたりするための案件だが、KDDI DIGITAL GATEではこの3つのプロジェクトを同時進行させている。
クライアントの意見を聞いたり、プロトタイプに対するフィードバックを受けたりといったプロセスをスピーディーにこなせるオンライン環境の利点を最大限に生かしているからこそ、こうした対応が可能となっている。「プロジェクトが始まってから、お客さまに対面では一度も会っていません」と、佐野氏は笑う。
リモートワークの問題点としてよく指摘されるのが、コミュニケーション不足である。人と人のアイデアや知識がインフォーマルな会話の中で自然と結び付き、それが創造性やブレークスルーを生むとされる。チームワークを深める意味でも、インフォーマルコミュニケーションの効用は見逃せない。
KDDI DIGITAL GATEでも新型コロナの感染が広がる前は、エンジニアチームのメンバーが毎週月曜の夕方に決められた場所に集まって雑談する「ハンガートーク」と呼ぶ習慣があった。この「ハンガートーク」を、今はオンラインゲーマーに人気の「Discord」とビジネスチャットの「Slack」を使ってオンライン環境で継続している。オンライン上でのこの雑談には、クライアント企業の担当者が参加することもあるという。