世界で広く知られるスポーツブランドのアンダーアーマー。昨年6月に楽天市場、続けてPayPayモールに出店し、予想を上回る売り上げを達成した。成功の要因はどこにあったのか。アンダーアーマーの販売を手掛けるドームと、パートナーであるワンプルーフの担当者に聞いた。

楽天市場のアンダーアーマーのモールトップ。構想から2カ月でオープンにこぎつけた楽天市場のアンダーアーマーのモールトップ。構想から2カ月でオープンにこぎつけた

 アスリートが持つ能力を最大限に発揮させる高機能ウエアの開発で知られるアンダーアーマー(以下、UA)。最近ではスポーツをライフスタイルに取り入れる人々にも広く認知され、日本でもファンが多い。そのUAの日本総代理店であるドームは、コンシューマーとのダイレクトなコミュニケーションを強化し、販路を拡大するため、2019年4月に楽天市場とPayPayモールへの公式出店の構想をスタート、同年6月にオープンした。

 パートナーになったのは、ECモール事業のスペシャリストであるワンプルーフ。ドームのEコマース部・運営責任者の大竹口智也氏は、同社を選択した理由をこう語る。

ドーム Eコマース部
Head of Department
大竹口智也氏ドーム Eコマース部 Head of Department 大竹口智也氏

「最終的にはハートの部分で決めました。単なる運営代行ではなく、UAというブランドの価値を理解し、一緒に戦ってくれる会社を探していたのです。スケジュールは正直タイトだったのですが、ワンプルーフは最初から親身に話を聞いてくれ、早い段階でゴールから逆算してスケジュールを構築、オープンへのステップを見える化してくれました。実際にプロジェクトがスタートしてからは、ぐいぐいとリードしてくれ、まるで当社のEコマース部の部員のように、“仲間”として献身的に動いてくれたのです」

 ドームでは自社でECサイトも運営しているが、そこで展開されているブランドのテイストを損ねることなく、楽天市場とPayPayモールへの出店が実現。オープンして2、3カ月後から急速に売り上げが増加し、「初年度には、想定していた売り上げの2倍近くまで伸び、今年度も1.5~2倍と順調に推移しています」(大竹口氏)という成果を出している。

制約が多いECモールで
発揮されるスピード感

 ECショッピングモールには、それぞれチャネルの特性があり固有の仕様がある。使えるタグや商品画像のサイズに制限があるなど、特殊な縛りが多いのが特徴だ。そのECモール内で、ブランド価値を毀損することなく出店するには、経験やノウハウが必要になる。

 ドームのプロジェクトを担当したワンプルーフの仲村和浩取締役は、成功した要因として、「ブランドのポリシーを守りつつ、制約の多いECモールのチャネルの中で、どこまで攻めることができるのか、互いに協力しながら進められたのが大きかった」と語る。

 例えば、ECモールではプライス差が目立ちやすいが、公式店でプライスを崩すのは難しい。その場合、アウトレット商品をSALEとして出品したり、ダイレクトな値下げと見せずに、ECモール主導の広告キャンペーンに乗って販売したりするという方法がある。ドーム側も、そうしたECモール特有の“売れる仕組み”を理解して、迅速に商品を供給した。

ワンプルーフ
ECソリューション事業部
山本毬乃ディレクターワンプルーフ ECソリューション事業部 山本毬乃ディレクター

 ECモール内のサイト運用を担当した山本毬乃ディレクターは、ドーム側のスピード感のある対応が成功に結び付いたと説明する。

「楽天市場では、大きなイベントのある時期を逃すと売り上げが落ちてしまうので、そのイベントに合わせ、いかに迅速に動けるかが重要になります。ドームさまは意思決定のスピードが速く、まずはやってみようという姿勢があったので、効果的な手が打てたのです」

 ECモールの運営では、全ての試みがうまくいくわけではない。最初から100%を求めず、トライ&エラーをなるべく多く重ねながら、PDCAを高速で回していくことが大事になる。山本ディレクターはサイトを運用しながら、ユーザーの年齢層や傾向をチェックし、多数の商品の中から売れ筋を見極め、費用対効果の高い広告を打ちながら、アクセスの多い時間帯にニュースレターを送るなど、細かな工夫も重ねて売り上げを向上させた。

 さらにブランド(ドーム)、モール(楽天やPayPay)、運用ベンダー(ワンプルーフ)の3社が密に連携し、同じ方向性でプロジェクトに取り組めたのも成功の要因となったという。情報を持つモール側の熱意を取り付けるのも、ワンプルーフの仕事の一部なのだ。