電通グループのリソースを活用する

 同社ではMDBDをはじめ、基本的にロジカルな課題解決のアプローチを行う。課題解決のためには、誰もが同じように理解し実践できる明快さが有効になるからだ。しかしロジックによって展開される「抽象」の思考空間だけでは、課題解決のための本質的なアイデアにはなかなかたどりつけない。

 そのため、生活者や店舗、工場などの「具体」を直観で捉えることを重視している。「抽象」と「具体」という二つの空間を行ったり来たりしながら、より効率の良い戦略シナリオをつくっていくのだ。

森 祐治
電通コンサルティング ディレクター
常務取締役

 そのプロセスの中で重要になるのが、初期仮説を構築する部分だという。しかし「優秀な組織であればあるほど、それまでの常識や過去の勝ちパターンに縛られて、なかなかその“外”を発想することが難しくなります。発想の空間を広げるため、まずは常識からジャンプし、離れることが重要だと考えています」と、森祐治ディレクターは語る。

 まずは「妄想だ」といわれるところまでジャンプし、その妄想を、顧客セグメントのニーズや自社資源と照らし合わせながら、実現性の高い戦略シナリオに落とし込み、筋のよい仮説を導きだしていく。そのために、電通グループならではのリソースも活用される。

「クライアントの要望に応じて、ブレーンストーミングの場にクリエイターやプランナーの人たちが同席することがあります。彼らの、中立的で世の中の流れとは無関係な発想が、“飛び道具”となることがあるし、思わぬ洞察が得られることがある。ロジックも大切ですが、計算づくめで“帝国”を築きあげたという例はない。イノベーションに必要なのは、必ずしもノーベル賞級の発明ではなく、生活者起点で少し視点をずらした所にある鉱脈を探しあてることです」(森ディレクター)