SDGsへの取り組みを事業の羅針盤とする一方で、足元ではCSRを着実に実現しようとする企業が増えている。その上でCSR経営の要素の一つである社会貢献で、科学の基礎研究への支援を充実させるケースも出てきた。今、日本企業のCSRは新たな展開期を迎えている。
CSR(社会的責任)は、企業が事業活動を通じて社会や事業活動の持続的な発展に取り組むものだ。SDGs(持続可能な開発目標)が、世界をより持続的なものにするための「羅針盤」であるとすれば、CSRは足元の推進エンジンといえる。
CSRは具体的には、企業統治や説明責任、リスクマネジメント、環境や社会への貢献、従業員の権利確保などの多岐にわたる要素から成っている。だからこそCSRは、「本業を通じて社会的課題を解決し、社会の持続可能な発展を図るとともに企業価値の創造や競争力向上に結び付ける企業戦略そのもの」といえる。
CSRの一要素である社会への貢献でも、外部の団体との連携による貢献活動や寄付、地域との協調などさまざまな活動がある。最近、特に注目されているのが科学の基礎研究への厚い支援だ。企業が直接であったり、基金を拠出した財団経由であったりと形は異なるが、いずれもテーマを問わず、長期間にわたり安定した資金を提供している。
「短期的な成果は求めない」とか「プログラムは研究テーマではなく、基礎研究に取り組む研究者、人そのものを応援する助成」などとしているのも大きな特徴だ。
企業の基礎研究支援といえば、いわゆる産学連携による研究資金の提供がほとんどだった。しかし、CSRの一環として基礎研究を支援するのは、実利を求めるのではなく、国の科学の基礎力が低下することへの企業の深い危機感が背景にある。