種をまく基礎研究がなければ、想像を超える大きな花は咲かない

~生命科学研究者支援プログラムを創設~

「戻ったのが医学部で、周囲は臨床に近い製薬会社との共同研究が多く、基礎研究をしている私は浮いてしまい、研究費も獲得できず、精神的にも大変でした。それでも私は、ES細胞の基礎研究を続けたかったので、さまざまな公募に応募。奈良先端科学技術大学院大学に採用され、ようやく基礎研究を思い切りできるようになったのです」

 基礎研究は、成果をなかなか出せないという側面がある。研究員の任期中に成果が出ないことが多々ある上、科研費などへの書類申請段階では、必要十分な論文ができているとは限らないため支援が受けにくい。

「今、基礎研究を支援するためには、大学や研究所単位の“拠点化”が必要だと思います。例えば、拠点ごとに高額な次世代シーケンサーや質量分析の機器を整備し、共同機器として誰もがアクセスできるようにする。同時に各拠点のシニア(上級研究員)の方々が、若い研究者の普段からの取り組みや研究への姿勢を観察して将来の可能性を見いだしていく。基礎研究の芽を伸ばすには、そのような長期的な視野に立った体制と、研究費の支援が大切になると考えています」

企業の枠を超えた
“やってみなはれ”プログラム

 生命科学研究者支援プログラム「サントリーSunRiSE」は、その危ぶまれる日本の基礎研究力の向上に貢献するものだ。研究の使途・期間の制限を排除し、志の大きい挑戦的なテーマを応援する。具体的には、公募で選ばれた若手研究者10人を対象に、一人1000万円/年を5年連続支援する。さらに同社ならではの組織・人脈によるネットワークも構築する。

 もともとサントリーは長年にわたって、基礎研究と研究者の支援を行ってきた。また同社は、創業者鳥井信治郎氏が、当時日本には、なじみのなかったワインやウイスキーの洋酒文化を全国に広げたように、誰もやらない新しいことに積極果敢に挑戦をする組織風土がある。その「やってみなはれ」精神が、このプログラムにも色濃く受け継がれている。

 山中教授は、サントリーが基礎研究に目を向けて“やってみなはれ”と後押ししてくれるのは本当にありがたい、と語る。

「企業経営でもSDGsが重視され、サスティナブル(持続可能)であることが求められています。目先の成果だけを追って応用研究だけで終わってしまってはサスティナブルにはなりません。しっかりした基礎研究があって初めて、20年後、30年後に、今からは想像もできないような優れた応用研究を生み出せるのです」

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