同社ISOサポート事業部の松田正一マネージャーは、こんなエピソードを紹介する。
ISOサポート事業部 松田正一マネージャー
「あるケータリングの会社にHACCP制度化を見越して早い段階から準備を始める提案をしました。経営者の答えは、『まだ周り(同業他社)がやっていないからいいよ』でした」
ところが19年になって急きょ、「すぐにHACCPを構築してほしい」と依頼が来たという。「東京五輪に納入する弁当の商談で、HACCP認証が必須条件とされたためでした」。このエピソードは、HACCPが食品の安全を担保するためだけでなく、事業拡大のツールとしても、有望なことを示している。
コンサルタントに
必要な顧客の視点
中小企業が外部に委託してHACCP構築・認証を目指す場合、委託先のコンサルタントの「質」が重要になる。
岡マネージャーは、こう説明する。
「当社にはISO審査員資格保持者や各業界を長年経験してきたコンサルタントが数多く在籍しています。ですが、コンサルタントの質は、経験の豊富さだけで決まるものではありません。お客さまの意向を正確にくみ取り、お客さまの目線でコンサルティングをして、実情に合った最適なプランを提示し、お客さまと一緒になって構築や運用を行う能力が重要だと考えます。そこで、お客さまにお願いしていることは『当社のコンサルタントを先生と呼ばないでください』ということ。コンサルタントは上から指図する存在ではなく、お客さまに寄り添う存在であるべきと考えているからです」
コンサルタントが顧客の上に立つか寄り添うかでは、顧客の負担の大小や支払う費用に大きな影響を与える。コンサルタントが顧客の上に立ち、審査を通すことだけを目標にして構築作業を進めると、現場の実情を無視して、ひな形に沿った作業を求め、用意する書類や帳票がどんどん増えてしまう。認証を得た後は毎年1回のサーベイランス審査(継続審査)を受けることになるが、審査員に指摘されるたびにコンサルタントが新たな書類や帳票の用意を現場に指示して、現場の負担と費用は増すばかりという悪循環に陥る。
「その点、当社のコンサルタントは顧客の目線で動くため、業務上やった方がいいことは残しますが、審査を通すためだけに行う作業は極力減らします。新たに書類や帳票の作成を求められても、業務で使っているものが流用できるのならそちらを選び、審査員に対して的確な説明をして納得してもらいます」(松田マネージャー)