三井不動産では、住宅事業における成長領域の一つとして、ストックビジネスの拡大を挙げており、住宅流通事業やリフォーム事業に力を入れている。昨今、高経年マンションの問題がクローズアップされる中、マンション再生事業にも積極的に取り組み始めている。総合デベロッパーとして多様な解答を提案できるのがその強みだ。

三井不動産
不動産ソリューションサービス本部
レッツ資産活用部長
久保田稔明氏

 不動産業界最大手の三井不動産では、「レッツプラザ」を窓口にして、土地活用や売買、賃貸経営、相続など、不動産資産に関わるさまざまな悩みに対応している。多種多様な事業を展開している同社グループ各社の総合力を生かして最適なソリューションを提案し、課題解決をサポートするものだ。昨年の震災以降、この窓口に特に増えてきているのが、マンションの再生に関する問い合わせだという。三井不動産の久保田稔明・レッツ資産活用部長は語る。

「マンション再生には、大きく分けて、バリューアップと建て替えの二つの手法があります。バリューアップについては、当社の『経年優化』の理念の下、既存建物の価値を最大限引き出す修繕・改修により、資産価値を高める提案をするとともに、お客さまの要望に応じて、専有部のリフォーム、売買の仲介、管理業務のサポートなどの細やかなニーズにもグループ各社を活用してトータルなサポートを行っています。建て替えについては、三井不動産レジデンシャルが中心となって取り組んでいます」

多様なマンションの
開発実績

 三井不動産レジデンシャルは、「パークシティ」「パークホームズ」などのブランドで新築マンションの分譲事業を展開している。同社のマンション建て替え事業には、そのノウハウが生きている。

三井不動産レジデンシャル
プロジェクト推進部長
中島 洋氏

「当社は40年以上にわたりマンション事業を展開してきました。その中でさまざまな開発ノウハウを蓄積し、お客さまに真にご満足いただける住まいづくりを実践し続けています。また多くの再開発事業にも携わることで、多数の地権者の方々のさまざまなニーズへの対応力を高めています」

 三井不動産レジデンシャルの中島洋・プロジェクト推進部長はこう説明する。

 直近のマンション建て替え事例が東京都港区の「シャトー三田建替事業」だ(2ページカコミ参照)。同事業はマンションと隣接地との一体開発を行うとともに、総合設計制度を活用して容積率の割り増しを実現した。街づくりの視点を取り入れた建て替え事業の代表例といえる。

計画から入居後までの
サポートも充実

三井不動産グループ各社の専門力を集結し、マンション再生事業を全面サポート拡大画像表示

「マンションのご所有者は、年齢層もライフスタイルも経済状況もさまざまです。マンション建て替え事業では、開発ノウハウを駆使した、付加価値の高い住まいづくりが大切であることは言うまでもありませんが、これと同じくらい重要なのは、ご所有者の方々の個別のニーズにどれだけお応えできるか、ということだと思います。当社であれば、管理・売買仲介・賃貸など、各分野のトップクラスのグループ会社と連携して、事業計画の立案、仮住まい、資産運用、建て替え後の管理などのあらゆる場面でソリューションをご提供することが可能であり、これらにより建て替えの合意形成をよりスムーズに進めることができると考えています。つまり、建て替え事業を単なるマンション開発でなく、ご所有者の生活全体に対するソリューション提供ビジネスと捉えることによって事業自体を円滑に推進する、という好循環の実現を目指しているのです」(中島部長)

 また、三井不動産では、シニアライフに関するコンサルティングを行っている。同社のケアデザイン室では、ケアマネジャーや社会福祉士などの資格を有する専門スタッフが専門知識や経験を基に、シニア向けに高齢期の住まいや介護に関する相談に対応している。高齢の所有者の中には、建て替え工事期間中や建て替え後の生活に不安を抱えているケースも多いため、不安の解消にも一役買いそうだ。