遅延発生要因が少ない
IPv6拠点間通信とSDN技術

 對馬氏は、通信の遅延が常態化するような事態に陥る前に、拠点間通信やその方式を見直すべきだと指摘する。具体的には旧来のIPv4に代わって、IPv6の通信方式を活用するということだ。

 對馬氏が語ったその解の1つがNTT西日本の次世代ネットワーク(NGN)で拠点間をダイレクトにつなぐIPv6ベースの安定したVPN通信である。インターネット手前のNTT西日本の「閉域網」を活用し、高いレベルのセキュリティを確保している点も強調した。

 続いて對馬氏は、Web会議サービスなど、業務で使用するクラウドサービスへの通信をたった1つのインターネット回線に集中させるべきではないと語る。特に、音声と動画を送受信するWeb会議サービスは通信量も多くなる。インターネット接続機器に重い負荷をかけていることは言うまでもないだろう。

 ここで役立つ技術が「通信の経路制御」だ。Web会議サービスや業務で使用するクラウドサービスとの通信に限って、それぞれの拠点からインターネットに接続するのだ。これで、拠点間通信やたった1つのインターネット回線への集中を回避することができる。

 これを可能にするのが「SDN(Software Defined Networking)」という技術。大雑把に言えば、ソフトウエアでネットワークを制御する仕組みだ。各拠点に設置してあるルーターをコントローラーで集中制御、集中管理する。これで、通信に応じて異なる経路を設定することが可能になる。さらに、各拠点の通信利用状況を可視化することもできるという。

 SDNを利用することで、ネットワーク管理者はコントローラーにアクセスし、各拠点に設置してあるルーターやL2スイッチ、無線LANアクセスポイントといった通信機器の一元管理や、遠隔制御が可能になる。機器を設定するために、機器がある場所まで行く必要がなくなるわけだ。さらに、在宅でもネットワーク管理の仕事ができるという大きなメリットがある。

 しかし、専任のネットワーク管理者がいない企業も少なくない。費用の問題で管理者を雇えない企業もあるだろう。そこでNTT西日本では、ネットワーク設定と運用のアウトソーシングも請け負っている。

 さらに對馬氏は、4つのバリューに加えて提供できるオプションとして、専用クライアントソフトをインストールした端末を利用する方法を紹介した。ソフトをインストールした端末は、拠点にあるルーターとの間でVPN通信を確立し、社内ネットワークへのアクセスを可能にする。

 従業員が私物として所有しているパソコンや、企業から貸与されているパソコンにクライアントソフトをインストールすれば、自宅でも、外出先でも、どこにいてもインターネット環境があればVPN通信で社内ネットワークにアクセスでき、業務ができる。まさにテレワークだ。