あるべき未来社会と経営をデジタルでリデザインする

これからのデータ活用は信頼と協調が鍵となる

──デジタルによって社会を再構築するために、具体的にどこから手を付けていけばいいのでしょうか。

 デジタル革命の本質は、データ活用にあります。例えば、新型コロナの感染が広がる中で、3密の状況を把握するためにスマートフォンの位置情報が活用されました。社会全体の様相をリアルタイムにデジタルデータとして写し取り、それを共有化したり、解析したりすることはもちろん、現実社会の将来をシミュレーションすることも技術的に可能なのです。

 しかし、現状ではほとんどのデータが小さな組織単位で分断されています。大量に集めて、それをつなげてこそデータは価値を生みますが、ばらばらな状態ではその効用が生まれません。

 会社や行政機関内でのデータ共用はもちろん、何に使うかは想定できなくとも社会全体での活用を視野に入れてオープンな環境を整えること、またオープンなデータを積極的に利用することが重要です。

 もちろん、個人データについては、それを所有する生活者自身が利活用の可否を決定し、利用状況をトレースできる民主的なデータガバナンスの体制を構築することが前提です。

あるべき未来社会と経営をデジタルでリデザインする三谷 慶一郎
NTTデータ経営研究所
エグゼクティブオフィサー

三谷 台湾のIT担当大臣のオードリー・タン氏は、「信頼と協調」というキーワードを用いていますが、社会・経済にとって有意義なデータ活用を実現する上では、まさに信頼と協調が大きな鍵となります。

 データを預かる行政や企業の信頼も問われますし、データ活用基盤となるシステムの信頼性、あるいはデータそのものの信頼性・正確性の担保も重要です。

 そうした信頼保証の仕組みを個別の企業や行政組織が構築するのは難しいですから、官民を含めて広く協調しながら、社会全体として相互補完していくことが求められます。

──新型コロナが終息しても変化の激しい時代は続くでしょう。これからの企業経営はどうあるべきですか。

 大切なのは、リーダーが目の前の課題に追われるのではなく、20年、30年先の社会がどうなっているのかをしっかりとイメージすることです。そして、その未来社会において自社がどういう存在でありたいのかという明確なビジョンを持ち、そこからバックキャスト(逆算)して、今打つべき手を一つ一つ打っていくことです。

 そこでもデジタルの強みを生かせます。ビジョンを描くのも、それに基づいて施策を実行するのも、リーダーの個人的能力に依存するのは限界があります。しかし、デジタルを使えば、瞬時にかつフラットに組織全体と対話できます。

 それによって、ビジョンを描くために必要な情報や意見を広く集めたり、ビジョンを浸透させ、施策の実行を促したりすることもできます。

三谷 先の見えない状況の中で、目指すべきゴールに向かっていくのは勇気がいるものです。その意味でも、ぶれないビジョンの大切さが改めて問われています。企業が掲げるビジョンは、その企業に対する信頼の裏付けにもなるので、データ活用や人材獲得においても重要な意味を持ちます。

 来るべき未来を想像し、ビジョンを実現していくためには、技術に精通するデジタル人材だけでなく、新しい社会やビジネスの仕組みを創造できる「アーキテクト」を育てる必要があります。個別企業だけで育成するのは難しいので、社会全体として資質のある人材を見いだし、育て上げるメカニズムを構築すべきです。当社もそこに積極的に関わっていきたいと考えています。

●問い合わせ先
株式会社NTTデータ経営研究所
〒102-0093
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TEL:03-3221-7011
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