日本企業に求められる事業の再定義

 通常、コンセプトというと製品やサービスを思い浮かべることが多いと思います。製品コンセプトやサービスコンセプトは重要ですが、さらに視野を広げて事業コンセプトを考える必要もあります。

 事業コンセプトづくりはビジネスモデルの創出であり、事業の再定義でもあります。自社の事業を改めて問い直すことで、新しい可能性が見えてくる。その好例が大垣共立銀行です。

 同行は金融機関の事業を、サービスという視点から見直し再定義しました。そのきっかけは、ある社員が見た消費者の行動でした。同行のATMでお金を引き出した顧客が、コンビニに行って公共料金の支払いをしていたのです。それは、銀行員にとって衝撃的な光景でした。

 確かに、銀行のサービスは面倒です。番号札を取って順番を待たなければなりませんが、コンビニならすぐに支払いができる上、ついでに買い物をすることもできる。このままでは、銀行の役割は小さくなるばかりです。

 こうした危機感のもと、大垣共立銀行はサービスのあり方を大きく見直しました。例えば、新たに設置されたドライブスルーのATMは、子供をクルマに乗せたまま用件をすませられると好評のようです。また、コンビニなどの他業態に一定期間社員を派遣するなどして、社内の意識改革も進めています。

 同行のような事業の再定義、事業コンセプトの刷新が、いま多くの日本企業に求められています。「ウチの商品はこういうものだ」とか「ウチの事業は昔からこうだ」という既成概念にとらわれ、新たな可能性への扉を自ら閉ざしている企業は少なくありません。

 ただし、「日本企業はコンセプトづくりが下手」と言うつもりはありません。特に中小規模の企業を見ると、そこには驚嘆すべきコンセプト創造の事例が多数あります。おそらくは多くの企業が、画期的なコンセプトのタネを持っていることでしょう。これらのタネをいかに見つけて育て、花を咲かせるか。MOTのコンセプト創造論では、そのためのヒントを提示したいと考えています。

制作/ダイヤモンド社・クロスメディア事業局