AIへの過度な期待
という落とし穴を乗り越える

 第3次AIブームを巻き起こしたディープラーニングは、多くの分野で導入されてきた。しかし、その真価を引き出せている企業はまだ一握りといえる。そんな中、ディープラーニングの課題を解決し、“現場で使えるAI”として注目されるのが、「スパースモデリング」だ。ディープラーニングと何が決定的に違うのか。世界でも稀な、スパースモデリング実装の先駆者であるHACARUSの藤原健真CEOに話を聞いた。

編集部(以下青文字):AIのブレークスルーとなったディープラーニングですが、実装の段階でつまずく企業も少なくありません。

現場で使えるAIを実現する「スパースモデリング」の真価HACARUS 代表取締役CEO
藤原健真
KENSHIN FUJIWARA
1999年、カリフォルニア州立大学コンピュータサイエンス学部卒業後、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に入社。ソフトウェアエンジニアとしてプレイステーションの開発に従事。同社を退職後、数社のITベンチャー企業で共同創業者兼CTOを歴任後、2014年にHACARUSを設立し、代表取締役CEOに就任。世界でも稀なスパースモデリング実装の先駆者として、日本企業の生産性向上、付加価値創出に尽力している。

藤原(以下略):最初に言えるのは、ディープラーニングに対する「過度な期待」です。AIはけっして魔法の杖ではなく、最適な場所で最適な使い方をしなければ、その真価を享受することはできません。ディープラーニングの実装につまずく企業は、残念ながらこの大前提を理解できていないことが多いようです。

 そもそもディープラーニングには、ラベル付けされた大量のデータが必要となります。にもかかわらず、データを収集していない、収集したものの生データのままなど、データ整備が不十分な企業が大半です。ディープラーニングに耐えうるデータにするには、数万~数十万件ものデータを人間がラベリングせねばならず、膨大なコストと時間がかかります。

 また、たとえデータ整備ができたとしても、ディープラーニングでは「ブラックボックス問題(注)」が発生しやすくなります。解析プロセスがわからないため、万が一トラブルが起きても原因究明ができず、対策の取りようがないのです。たとえば病理診断にAIが使われる場合、病変と判断した理由がわからなければ、医師は患者に病状を正しく説明することも治療方針を決めることもできません。こうした人の命に関わるケースだけでなく、あらゆる場面で説明責任が求められるいま、より解釈性の高いAIが求められ始めています。そこで注目されているのが、当社が展開するAI技術「スパースモデリング」です。

注)機械みずからが膨大なデータを学習し、自律的に答えを導き出すという特性上、「なぜその答えを出したのか」というAIの思考プロセスがわからない状態のこと。