スパースモデリングといえば、世界で初めてブラックホールの撮影成功に使われた技術として話題となりましたが、ディープラーニングとは何がどのように違うのでしょう。
ブラックホールの撮影には地球サイズの電波望遠鏡が必要といわれ、世界各地にある数十機の天体観測機で得られる情報では圧倒的にデータが足りないとされてきました。しかし、日本を含む国際プロジェクトチームがスパースモデリングを使ってデータ解析をした結果、世界で初めて、ブラックホールの撮像に成功したのです。
スパースモデリングは、名前通り「スパース」(まばら)をキーワードとする技術で、少量データから「特徴」を抽出し解析します。ディープラーニングがビッグデータの存在を前提としているのとは、対照的です。
たとえばAIを使って人間の顔を照合するとしましょう。ディープラーニングでは、髪型などの細部に至るまで膨大なパーツ情報を一つひとつ検証することで、一致する確率を割り出します。一方、スパースモデリングでは、目鼻立ちや輪郭などの特徴を部分的に抽出し、判断します。これは我々人間の脳がやっていることと同じです。判断に重要な変数だけを残す、この「変数の間引き」がスパースモデリングの肝となります。
ただしこの変数の間引きに当たっては、人間のノウハウを事前に学習せねばなりません。よって当社では、データサイエンティストがお客様の現場に張り付いて、「なぜそう判断したのか」と繰り返し質問をしながら特徴的な変数を探り、それをアルゴリズムに落とし込んでいくのです。クラウドツールの登場でいまや誰でも簡単に運用できるようになったディープラーニングと違って、スパースモデリングにはデータサイエンティストが不可欠です。いかに仮説を持って変数を間引けるか、その力量が問われます。それをクリアしたうえで企業の現場で実装できているのは、世界を見渡しても我々HACARUSだけだと自負しています。
日本のものづくりと
相性がよい理由
少量データで小さく始められるというメリットは、R&D分野との相性が非常によいように思われます。
おっしゃる通りです。無駄な実験を減らすことができ、その結果、R&Dのスピード化、コスト削減に大きく貢献します。その好例が、田辺三菱製薬との協業による「AI創薬」です。同社は創薬に不可欠な化合物判定を、ディープラーニングだけの手法から、ディープラーニングとスパースモデリングを組み合わせた手法に変更したことで、薬物当たりの解析時間を50倍以上に高速化させることに成功しました。
また、ファクトリーオートメーション分野でも実績が出ています。三菱電機との協業では、熟練工の技能を再現する加工品質検査を自動化しました。完成品検査でも数多くの導入実績があります。不良品率が極めて少ない製造ラインにおいても、少量データでAI導入・運用ができるスパースモデリングは、日本のものづくりと相性がよいと考えます。
もう一つ強調したいのは、スパースモデリングが非常に「エコなAI」であるということです。5G時代の到来によってデータがクラウドで処理できない量にまで激増し、端末側でのデータ処理がますます必要になるといわれていますが、それをディープラーニングで行うと莫大な消費電力がかかります。しかしスパースモデリングなら、小さなプロセッサーで動かすことができ、当然消費電力も少なくて済む。サステナビリティ時代にふさわしいAIだといえるでしょう。
最適な場所で最適な使い方をすることでAIの真価を引き出すためにも、顧客の目利きも重要ですね。
スパースモデリングが万能なわけではありません。ビッグデータがきちんと入手できるなら、ディープラーニングのほうが効率的な場合もあります。その意味で、お客様にも自社にふさわしいAIを見極める目が求められます。そのうえで我々も、顧客との二人三脚で、現場で本当に使えるAIを今後もつくり上げていきたいと考えています。
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