クラウドベースの無線ネットワークを用いた市場参入を試みる企業の一つが、東京に本社を置く電子商取引大手の楽天だ。国内第4の通信事業者として全国規模の無線ネットワークを構築し、すでに高速通信規格「5G」サービスの提供を開始。国内で計85%のシェアを占める既存3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)に競争を仕掛けている。

 「(既存3社と)同じやり方では競争はできないという話になった」。楽天モバイルの執行役員兼技術戦略本部長、内田信行氏はこう語る。

 楽天は、モバイル通信ネットワークを構成する無線基地局とコアネットワークの双方を仮想化し、クラウド上で運用することを提唱する。それでもやはり各地に基地局を設置する必要はあるが、同社の基地局は従来型ネットワークに比べ、小型化・簡素化されている。音声通話やデータ要求の無線処理をする専用のハードウエアが不要になり、単に個々のデバイスからの信号を、クラウド上でそれを処理するソフトウエアに送信するだけでよいからだ。

 楽天などのクラウド推進派は、ソフトウエア主導のネットワークの場合、更新作業が遠隔操作で一斉にできるため、基地局で個別に作業するよりも管理コストが低く抑えられると話す。また、問題が発生した時に修正したり、自然災害などで局地的に需要が急増した際にネットワークのリソースを移動したり調整したりするのも容易になるという。

 楽天の試算によると、ネットワーク構築費用を40%節約することになり(それでも1兆円近くはかかる)、運用コストも大手通信事業者に比べて30%安くなる可能性があるという。同社は月額3278円の無制限プランを提供しており、競合他社の半額程度だ。

 これは大胆な試みではあるが、成功が保証されているわけではない。

 ガートナーのアナリスト、瀧石浩生氏は、柔軟性やコスト面から見て、いずれ5Gサービスにはクラウドベースのネットワークが不可欠になるとの見方を示す。だが当面の間は、大量のデータを迅速に処理するのに最適化された機器を用いる従来型ネットワークが通信速度で優位を保つかもしれない。

 さらに言えば、楽天式のネットワークが従来型ネットワークより本当に費用対効果が高いかどうかは今後の検証が必要で、汎用サーバーの方が余計に電力を消費する可能性もあると瀧石氏は指摘。また、参入間もない楽天は、既存企業のような膨大なトラフィック(通信量)の試練をまだ経験していない。

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