データ収集、解析からインサイトを読み
イノベーションにどう生かすか

 こうしたマーケティングテクノロジーの進化は、近年の消費者の購買行動の大きな変化をより詳細に解析するという広告主やマーケッターのニーズを反映したものであるが、それに加えて、消費者インサイトを正しく把握するための消費者とのつながり方やマーケティングのプロセスそのものをマーケッターは再構築しなければならない、という指摘もあった。

 セッション「デジタル時代に消費者インサイトはどう捉えるかべきか」では、塚本陽一氏(インテグレート 第1統合ソリューション部 チーフプランナー)をモデレータに、広告におけるPDCAマネジメントとマーケティング活動へのフィードバックなど、現場の最前線での取り組みが紹介された。 

「アドテック東京2012」セッション「デジタル時代に消費者インサイトはどう捉えるかべきか」より

 宿泊施設予約サイトを運営する一休の汲田貴司氏(取締役CMO)は、スマートフォンがネット利用の仕方を劇的に変えたと指摘。もはや「情報の送り手の工夫だけではだめ。消費者は“共感”をベースに情報を取る時代」になったと述べる。同社では、運営する宿泊施設予約サイトを消費者が「自分が共感できる口コミ」を探しやすい構成に変更を行った。

 同社では、個人情報を提供したくない消費者もいるため、情報提供においてはサイトの利用者と「いかに気持ちよくつながっていけるか」を追求する方針だ。

 また、松本貴嗣氏(ジョンソン エンド ジョンソン マーケティング・ディレクター)も、「本当に自社製品が愛されているかを見極める方法は、多く買う人がロイヤルカスタマーではなく、だれに商品を勧めているか、たとえば家族に勧めているかなどを読み取ること」と指摘した。

 こうした意見を受け、エージェンシーの立場から京井良彦氏(電通 ビジネス・クリエーション局 チーフ・コミュニケーション・プランナー)は、今日のマーケティングにおいては、「生活者の個人としてのストーリーをまるごと把握する必要がある」ほど詳細なインサイト分析のなかで、そのストーリーに沿って自社商品をどう位置付けるかの重要性を紹介した。

 まさに「無名の人が情報のパスをつないでいる」デジタルマーケティングの時代、人と人のつながりからインサイトを見出すために多くのデータをどう解析するか。それをビジネスのイノベーションにどう生かすか。

 アトリビューションを始めとする最新テクノロジーを生かしたデータ解析手法の活用と、消費者が個々に持つストーリーに沿ったインサイトの把握が、今後のマーケティングを考える上での大きな課題である。