業界の慣習にとらわれない、ある企業のイノベーション。成約数も売り上げも激増した理由

カード決済に切り替えたことで企業の信用が高まった

　同社は「カード決済」という本来のメリットも十分に享受している。金子次長は、冒頭の自社営業担当者の負担が軽減されたこと、自社の信用調査が不要になったことに加えて、次の点を挙げた。

　アメリカン・エキスプレスの加盟店になったことで、社会的信用の高いビジネス・カード会員との取引が可能になる。顧客企業に対する請求業務が不要になるので、手間のかかる請求書の作成や発行の手間が軽減される。

　回収業務もアメリカン・エキスプレスが代行するので、決まったサイクルで確実に代金が振り込まれる。

　銀行振り込みの場合、アカウントに入金が反映されるのに4営業日かかるが、カード決済は即座に反映されるので、急な出稿にも対応できる。

　そしてなによりも、現金払いという独自の商習慣からカード決済に切り替えたことで、同社の信用がより高まったと言う。

「現在、カード決済に対応している広告会社はほとんどありません。大手検索サイトのウェブ広告自体はカード決済ができるのですが、お客さまは、大手検索サイトに直接アカウントを持つことができなかったので、代理店経由で現金でしか支払うことができなかったのです。広告業界的に、慣習やさまざまな事情があってやむを得ない部分もあるのですが、当社は大手検索サイトにお客さま自身のアカウントを作って、お客さまがカード決済できる仕組みに変えました」。

　この仕組みだと、顧客が同社のアカウントの中身を見ることができるので、検索結果なども明らかになり、さらには、広告会社の囲い込みが効かずに解約リスクも高まることになる。しか「企業の透明性を高めなければお客さまから選んでいただくことはできません。また、それが業界の信用につながると思います」と金子次長は前向きだ。「最近では、お客さまからの強い要望もあり、テレビCMについても取り扱いを開始しました。もちろんカード支払いが可能です」。

　同社はアメリカン・エキスプレス企業間取引加盟店になったことで、幅広い業種の新規顧客を開拓し、売り上げアップと業務効率改善を実現した。さらに、顧客の満足度を向上させ、企業の信用を高めることにも成功できた。企業間決済にカード決済を導入したことは、同社に予想を超えるメリットと可能性をもたらしている。さらに今後の成長も後押しすることだろう。