世界の先進国の中で、キャッシュレス化が遅れている日本。ビザ・ワールドワイド・ジャパンでは、世界標準のセキュリティ技術を背景に「Visaのタッチ決済」「Visaデビット」の普及や企業間決済(BtoB)に力を入れ、キャッシュレス社会の実現を目指している。代表取締役社長であるスティーブン・カーピン氏に、日本市場におけるキャッシュレス戦略を聞いた。

日本のキャッシュレス決済比率は29.7%。
普及のカギは安全・スピーディー・利便性

  1958年の設立以来、Visaはシンプルかつ揺るぎない理念を持っている。それは、全ての人がいつでもどこでも利用できる、最も優れた決済方法を提供するということだ。

 スティーブン・カーピン社長は、Visaのビジョンとミッションを次のように説明する。

「当社のビジョンは、世界中どこでもいつでも、誰からも選ばれ受け入れられる決済手段となることです。そのために、パートナーの皆様と市場の消費者のニーズに合ったサービスやプロダクトの提供に努めています。また当社は、個人や企業、経済の発展のため、最も革新的で安全・安心な決済処理ネットワークを通して、世界をつなぐことをミッションに掲げています」

 そのVisaが今、力を入れているのが、日本におけるキャッシュレス決済の拡大だ。VisaとMMD研究所の共同調査(「コロナ禍での支払いやお金の管理に関する調査」2021年8月)によると、コロナ禍で生活様式に変化があり「キャッシュレス決済で支払うことが増えた」という回答がトップ(19.4%)になっている。ただし、日本のキャッシュレス決済比率は20年の時点で29.7%(経済産業省発表による)、決済比率が5割を超える国も多い先進国の中ではまだ低い数字である。なぜ日本は、キャッシュレス決済がなかなか進まないのだろうか?

「理由の一つは、キャッシュレスの手段が非常に分断化されていることです。たくさんの種類の支払い方法があるので、消費者は混乱しがちです。分かりにくいことに直面すると、消費者は、昔からある方法(現金払い)を選択してしまう。でもこうしたことは、キャッシュレスが普及する初期段階ではよくあること。最近のキャッシュレスの取引件数は伸びており、日本政府が目標としている25年までに40%という数字は達成できると思います」

 前出の共同調査によれば、消費者がキャッシュレス決済に求めていることのトップはポイントが貯まりやすいことだが、セキュリティ面で安心して利用できること、素早く会計できること、利用できる場所が多いことの三つがほぼ並んでそれに肉薄している。Visaでは、こうした消費者の求めに応じるため、デビットカードやタッチ決済の普及に努め、シンプル、安全、スピーディーな決済体験を提供しているのだ。

「私たちは、対面の世界とオンラインの世界の両方で、消費者にとっても加盟店にとっても、買い物という体験がもっと簡素化される必要があると考えています。デビットカードとタッチ決済の普及を進めていくことで、最善の決済体験を実現しようとしているのです」