創業20年で350店舗*¹、施術実績1700万人*²と事業が急成長し、整体チェーントップとなった、カラダファクトリーなどの整体や骨盤調整特化の、ファクトリージャパングループ。村田尋一氏は同社会長就任直後にコロナ禍に見舞われたが、社員の雇用を確保し、2021年度は国内の店舗数を減らすことはなかった。就任から1年9カ月、トップとして、今後同社をどのような会社にしていくのかを聞いた。
*1 2021年11月末時点
*2 2021年2月時点

9割を正社員として雇用することで
サービスの均質化と質向上を追求

 2020年4月1日、美容業界から転じ、ファクトリージャパングループ(FJG)会長に就任した村田尋一氏を待っていたのはコロナ禍への対応だった。感染拡大が落ち着いた同年7月からは全国のほぼ全ての店舗を自ら一軒一軒回った。「大変な時期だけれど、大丈夫。一緒に頑張ろう」と不安にさいなまれる社員を激励した。

 同社の企業理念は「『人財力』で健康の促進と予防に対する意識改革を世界に広げ、社会に貢献します」だ。前職でも人財と健康はコアな要素であり、理念に深く共感して現職を引き受けた村田会長には当然の行為だった。

 その企業理念の中の“健康”について、村田会長は「何でもワンクリックで買える便利な時代ですが、どれだけ豊かでも健康や寿命は買うことができない。健康や命は人が最終的に最も大事にしていくべきもの。“健康”を中心に据えたことは、誰にでも伝わりやすい強いメッセージになっている」と自負する。

 そして「人財力」は同社の「最も大切なサービスの担い手であり経営の軸となるもの」だ。資本主義が高度化し、モノが飽和し、モノからコトへの消費傾向は今まで以上に加速している。とりわけ、健康産業の人の手を介した業態はAI(人工知能)に置き換えられない希少なサービス業の典型例だ。

 コロナ禍で客足が遠のき、人件費を削る企業もあるが、社員の約9割を正社員として雇用し、サービスの均質化と質の向上を追求する村田会長に言わせれば「とんでもないこと」。同社はコロナ禍でも約1700人*³の社員に100%の生活保障をしてきた。

 青山や銀座では、ヘアサロンなどで場所と設備だけ貸す業態が流行している。フリーランスの業務委託契約をした美容師は、設備投資なしで一等地で腕を振るえる。サロンのオーナーは雇用や保障のリスクを負わずに済む。「経済合理性を追求すれば、そのようなビジネスも成り立つでしょう。ただ、それでは全てを個人の自己責任に帰すことになり、社員の成長やお客さまへの均質な対応への責任を考えたとき、長期的な展望がありません」。

 だからこそ社員として雇用し、その人の成長を考えて、教育に時間をかけ、長く働いてもらう。結果的に社員が定着し、離職率は下がり、顧客満足にもつながる。事実、近年、同社の離職率は順調に下がってきているという。

 コロナ禍にもかかわらず、21年度も280人の新卒を採用し、22年度は300人を予定している。同社にはきめ細かい研修プログラムがあり、教育体制も万全。加えて村田会長は社員たちに、プロフェッショナルとして腕を磨くため、自分自身へのお金と時間の投資を怠らないようにと折に触れ促している。

 整体は技術を習得し、サービス・ホスピタリティーを持って自らを高め、社員自身の力でファンを増やせる魅力的な仕事だ。しかし、「1年で一人前の整体師になりたいと目標を立てたとしても、自分への投資を怠れば、1年は2年に、2年は5年になる。それは遠回りでなく、脱落の道です」。十分な自己研さんのためにも正社員という「心理的安全性」は必須だ。「人への投資、教育は今後ますます強化していきます」と村田会長は断言する。

*3 2021年4月1日時点