アウディ電気自動車e-tron Sportback 55 quattroに乗る

e-tron Sportback 55 quattro(※一部日本仕様と異なります)
全長×全幅×全高=4900×1935×1615mm。定員5人

 25年までにグローバルのラインアップで20車種以上をBEVにすると宣言したアウディ。日本市場に送り込んだ嚆矢が「e-tron Sportback」だ。スタイリッシュなクーペタイプのミッドサイズSUVモデルで、前輪と後輪を駆動する2基の電気モーターを搭載している。20年9月発売のe-tron Sportback 55 quattroの電気モーターシステムの最高出力は300kw、最大トルクは664Nm(※参考・日産リーフのモーターの最高出力は160kW、最大トルクは320~340Nm)。95kWhのエネルギー容量を持つ駆動用バッテリーにより、1回の満充電当たりの航続可能距離は最大423km(WLTCモード、以下同)である。

 e-tron Sportbackは先述の通り、2基の電気モーターで4輪を駆動する新世代のquattroシステムを搭載した電動4WD車だ。通常は主にリアのモーターを使用し走行抵抗を低減し、電力エネルギーの消費を抑える。滑りやすい路面や急加速、コーナリング時など4WD 走行が望ましいとシステムが検知した場合は、フロントモーターでも駆動する。電気モーターのトルクが立ち上がるまでに要する時間は、わずか0.03秒。これは従来のどのquattroテクノロジーよりもはるかに短い反応時間で、瞬時に余すところなくモーターのパワーを路面に伝えることが可能となっている。

 アルミとスチールを適材適所に配置することで軽量・高剛性を実現する複合ボディーコンセプトを採用。駆動用バッテリーはボディー下部のホイールベース(車軸)間に配置することで、低重心化を実現した。減衰力可変式のエアサスペンションを標準装備し、快適な乗り心地とダイナミックな走行性能を高いレベルで両立させた、とアウディは主張する。

e-tron Sportback 55 quattroのインテリア。未来感覚あふれる、モダンなコクピットを持つ
アウディ初の装備、バーチャルエクステリアミラー(オプション)。小型カメラにより車両側方の視界を確保する。映像はダッシュパネルとドアの間に設置されたディスプレーに映し出される

 短時間だがe-tron Sportback 55 quattroに乗る機会を得た。未来感にあふれる内外装を眺め、着座して電気スイッチをON。メーターなどの画像がイルミネーションのようにコクピットに浮かび上がる。ほぼ無音の静謐かつモダンな空間だ。

 アクセルを踏み込むと、約2.6tの車重をものともせず、グッと前に出る。安全を確認しフル加速を試みると、鋭く加速Gが立ち上がりほぼ全体重がバックレストに押し付けられた。4WD+モーターの加速感は強烈! そのときも静粛性は保たれる。ちなみに0~100km/h加速は5.7秒。スポーツカーに比肩する数値だ。

 低重心とエアサスペンションの効用で、ロール(車体の傾き)は小さく、クルマの動きは滑らかで俊敏。圧倒的なレスポンス、スムーズさと強烈な加速そして静粛性に驚かされた。ボディーの剛性感も非常に高い。他の自動車では味わえない鮮烈な体験であった。

e-tron Sportback 55 quattroのリアビュー。(※一部日本仕様と異なります)230kWhの電気モーター2基を搭載する、最大航続距離335kmのe-tron Sporback 50 quattroもラインアップする