新たなブランドを続々と展開、ESG戦略にも力を入れる
市場からの多様なニーズに応えて、ヒルトンは新たなブランドを次々と国内で展開している。21年9月に開業したのは、京都市内北部の鷹峯三山の麓に立地する、ラグジュアリーブランドの「ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts」。ヒルトンのブランドカテゴリーの中では“ソフトブランド”の位置付けになる。ソフトブランドとは、オーナーが掲げるコンセプトを大切にしながら、ヒルトンが前面に出ることなく、集客やホテル運営をヒルトンのコマーシャル・エンジンでサポートするという形態のブランドのことだ。
「『LXR Hotels & Resorts』は、その土地の歴史や文化に根差して、唯一無二かつ至高のサービスを提供するヒルトンのコレクションブランドで、独立したラグジュアリーホテル。ROKU KYOTOは“Dive into Kyoto”をコンセプトに、知る人ぞ知る京都の魅力を提供します。こうしたソフトブランドは、今欧米ですごく伸びており、これから日本でも増えていくと考えています」
25年に大阪、26年に東京・日本橋で開業する「ウォルドーフ・アストリア」は、“ラグジュアリーの中のラグジュアリー”と位置付けられるヒルトンの最上級ブランド。1893年にニューヨークで開業して以来、世界のランドマークとなる地域に約35軒を展開しており、“True Waldorf Service”と呼ばれる、上質でパーソナライズされた極上のサービスを提供する。かつてニューヨークで紳士淑女が集まったラウンジ“ピーコック・アレー”が象徴的な存在となっている。
24年に大阪で開業する「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」は、いわゆるライフスタイルブランド、活気に満ちたライフスタイルを提案するブティックブランドだ。その土地の魅力を堪能することを目指し、洗練されつつもリラックスできる環境を提供する。レストランでは地元ならではのローカルフードも提供され、無料レンタルの自転車があり、地域を十分楽しめるようチェックイン・チェックアウト後に利用できる“トランスファー・ラウンジ”を備えている。
そして22年に開業するのは「ヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸」。ガーデン・インは、コストパフォーマンスの高いミッドスケールのブランドで、ヒルトンの中でも急成長している分野だ。現在52の国と地域で930軒以上を展開しており、日本上陸は初めてとなる。ターゲット層は、35歳以上の男女、中間管理職で世帯年収が700万円以上、バリューを求めつつ、フルサービスのホテルのクオリティーを妥協したくない層と設定している。
こうした新たなブランドを投入する一方で、ヒルトンはコミュニティーへ貢献するという点からも積極的な活動を行っている。従来から“トラベル・ウィズ・パーパス”というESG戦略を掲げており、30年までに社会的影響の投資倍増と環境負荷の半減を目標としているのだ。
「具体的には、22年末までにサステナブル・シーフードの調達を25%にするという目標を掲げ、日本ではその一環として21年10月にサステナブル・シーフードにおける協働パートナーシップ覚書”を締結しました。また19年に“ヒルトン・エフェクト財団”を設立しており、日本の団体にも助成金の寄付を行い、毎年“ヒルトン・エフェクト・ウィーク”期間には、各ホテルやリージョナルオフィスでボランティア活動を実施しています」
ヒルトンでは、パンデミックが収束すれば、ホスピタリティー業界は19年以前の状態に戻ると確信しており、開発はむしろ加速するという見通しを持っている。
藤本氏は最後にこう締めくくる。「ヒルトンは100年以上前からホテル事業を展開し、さまざまな危機を乗り越えてきました。コロナ禍もその一つで、ホスピタリティー業界の成長は疑っていません。新しい場所を訪れたいというニーズは、さらに大きくなると考えています。日本は世界から見ても非常に魅力的なデスティネーションで、地方にはまだまだ魅力的な都市がたくさんあります。今後もその魅力を、地域と一緒になって世界に発信していきたいと考えています」。