情報セキュリティー分野のリーディング企業であるラックは、日々進化する金融犯罪に対応するため、
最先端の対策ソリューションを開発。2021年10月、三菱UFJ銀行とのAIによる不正検知の共同実験で
94%という高い検知率を達成、実用化への大きな一歩を踏み出した。

 ラックと三菱UFJ銀行は、2021年5月から、AI技術を活用したATM不正利用の発見手法に関するPoC(概念実証実験)を進めてきた。その背景には、年間の特殊詐欺被害額が285.2億円(20年、警察庁公表)に上り、今も高い水準で推移しているという状況がある。特に近年は、高齢者を狙った預貯金詐欺やキャッシュカード詐欺盗、還付金詐欺など、ATMを経由して預貯金を不正に引き出されるケースが多く、その被害は年々増加している。

特殊詐欺全体の被害は減少傾向にあるが、ATMを出入り口とした預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺盗、還付金詐欺はむしろ増加傾向にある
※ 預貯金詐欺とは、従来オレオレ詐欺に包含されていた犯行形態を2020年から新たな手口として分類
出所:警察庁「特殊詐欺認知・検挙状況等(令和2年・確定値)について」を基にラックが作成
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三菱UFJ銀行
大塚美波調査役

 三菱UFJ銀行で調査役を務める大塚美波氏は、「ATMを介した詐欺は、銀行員が介入できず、声掛けによる防止が難しいため、『詐欺が疑われる引出しをエラーにする』などの対策が必要になります。ですが、人の手によって『エラーにする条件』を設定するには、詐欺手口を熟知している担当者の経験値に依存する上、設定可能な条件の項目数や粒度にも限界があります。そこで、既存の金融サービスでも導入されているAIを利用することで、不正取引を検知できるのではないかと考えたのです」と語る。

 ラックでは、急増する金融犯罪被害を抑止するニーズに対応するため、21年5月に「金融犯罪対策センター(FC3)」を設立、今回のPoCは同センターが中心となって進められた。