創立以来、「公共トラックターミナル」として首都・東京と地方をつなぐ物流を支えてきた日本自動車ターミナル(JMT)。物流の持続可能性を底支えする「エッセンシャル・プラットフォーム」であり続けるために、その圧倒的な立地優位性を生かした事業戦略で、自らの事業基盤の強化を急ぐ。
コロナ禍でも動きを止めることがない物流――。中でもトラック輸送は国内のモノの動きの約9割を担うエッセンシャル産業だ。日本自動車ターミナル(JMT)は1965年の創立以来、東京23区内に4カ所ある公共トラックターミナルの運営を通じて、トラック輸送の円滑な流れを底支えする役割を担い続けてきた。
特積事業者と呼ばれる長距離幹線輸送を担う運送事業者の多くは、JMTのトラックターミナルで大型車両から小型車両への積み替えなど、幹線輸送と域内配送との連携を行う。
秋山俊行社長は「トラックターミナルは物流効率化に欠かせない積み替え輸送基地であり、結節点です。特積事業者の皆さんに使い勝手が良い施設や機能を提供することを通じて、日本や東京の物流効率化に貢献していく。それが当社の揺るがない事業の柱であり、存在意義です」と語る。
有力企業が相次いで物流施設に“選ぶ”理由
秋山俊行代表取締役社長
ただ、経済や社会が劇的に変化していく時代にあって、物流を支える存在であり続けるためには、自らを変革していく必要がある。とりわけ、東京23区内という一等地で事業を続けていくためには、土地を有効活用することによって自らの経営基盤を強化していく取り組みは避けて通れない。
そこでJMTは、創立50周年を迎えた2015年に、本格的な物流センター事業という新たな事業領域に打って出ることを決め、18年7月に京浜トラックターミナル(東京都大田区)内に延床面積約9万7000平方メートルの高機能型物流施設「JMT京浜ダイナベース」(以下、ダイナベース)を竣工した。ダイナベースは東京・平和島という際立った立地優位性もあり、医薬品卸大手の東邦ホールディングスが主要テナントとして入居するなど、物流施設として高い評価を受けた。「ダイナベースの建設は大きな挑戦でしたが、立地を含めた当社のトラックターミナルとしての価値の高さを、われわれ自身が改めて確信できた良い機会となりました」と振り返る。
その確信が、EC業界大手・アスクルの専用施設を建設するという次なる飛躍につながった。21年7月、葛西トラックターミナル(東京都江戸川区)内に「JMT葛西A棟」が竣工。地上5階建て・延床面積約5万6000平方メートルの規模で、都心に向けたラストワンマイル配送拠点としての立地優位性が高く評価された。「アスクルさまから選んでいただけたことで、ここでも当社のトラックターミナルとしての価値が証明されました。当社のトラックターミナルは、4カ所全てが東京都地域防災計画における広域輸送基地及び国土交通省の民間物資拠点に指定されており、免震構造による地震対策や72時間対応の非常用自家発電設備を備えています。立地優位性にとどまらず、災害時における事業継続性や公共トラックターミナルとしての社会貢献の高さも評価されました」と語る。