日本通運は今年1月、持ち株会社「NIPPON EXPRESSホールディングス」を設立して新体制に移行した。同時に、新ブランド「NX」を立ち上げるとともに、グループの新本社も移転。グローバルに照準を合わせ、日本の総合物流の代表的存在である同社グループの“この先”について齋藤充社長に聞いた。

――新たなグループ体制がスタートしました。このタイミングで再編にかじを切った目的とは何でしょうか。

 当社グループは長期ビジョンの中で「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」の実現を掲げており、会社創立100周年を迎える2037年に売上高の5割を純然たる海外で稼ぐという目標に向けて進んでいます。しかし、それを実現するためには、従来の延長線上での取り組みだけでは難しく、海外物流会社のM&Aなどを通じて非連続な成長を遂げていくことが不可欠となります。今回のホールディングス(HD)体制への移行は、M&Aや再編が行いやすく、海外での成長をエンジンにしていける立て付けに変えていくために不可欠な取り組みでした。

――HD体制への移行と同時に、「NX」という新たなグループブランドの導入と新本社となるグループ統合拠点(NXグループビル)新設を実行しました。

 三つの変革を一挙に行うことで、従業員の意識変革を強く促したいと考えました。ブランド変更では、当社の前身を含めて150年近く続いてきた「マル通マーク」を変えることにしました。簡単な決断ではありませんでしたが、あえて一歩前に踏み込むことで「われわれは本気で変わっていく」という強い思いを伝えることが大事だと考えました。

 また、神田和泉町に誕生したグループ統合拠点には、首都圏に分散していた支店や事業所、グループ会社などが一堂に集まり、陸海空の壁を取り払った機能本位の組織へと生まれ変わりました。

 さらに、決算期も従来の3月期から12月期に変更するなど、グローバルに照準を合わせた取り組みを進めています。

世界で戦うためにM&A戦略を加速する

――コロナ禍という制約がありながら、順調な事業成長が続いています。

NIPPON EXPRESSホールディングス
齋藤 充
代表取締役社長 社長執行役員

 5カ年の経営計画の3年目が終了しましたが、策定当初に掲げた目標を上回って推移しています。大きく伸びているのはやはり海外です。東南アジアなどで続けてきた投資が大きな成果を上げています。また、欧州エリアの法人を中心に経営トップの現地化に力を入れており、非日系顧客の獲得につながっています。

 ただ、さらなる成長を実現し、世界で戦っていくためには、M&A戦略を駆使しながらトップラインを引き上げていく取り組みが欠かせません。今後、欧米のグローバルメガフォワーダーと肩を並べていくためにどうしても必要なのが海上貨物の取り扱いの拡大です。グローバルサプライチェーンは海上輸送が基軸になっており、海上貨物を押さえることが重要な意味を持ちます。当然、M&Aにおいても大きなターゲットになります。

 また、世界のモノの流れの6割以上はアジア発着です。アジアに強い海貨物流会社を手中にできれば、NXグループのグローバルでのプレゼンスをさらに高めることができます。